ブックタイトルメカトロニクス6月号2014年

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概要

メカトロニクス6月号2014年

46 MECHATRONICS 2014.6日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力VOC排出抑制の自主的取組の成果と課題(3)~産業環境対策小委員会(第2回会合)の情報~【第147回】■国内におけるVOCの現状と抑制の 取組について 同小委員会において紹介された「国内におけるVOCの現状と抑制の取組について」のトピックスを以下に紹介する3a)。(1)光化学オキシダントとSPMとVOC 大気汚染防止法(以下“大防法”と略)で規定されている揮発性有機化合物(Volatile OrganicCompounds、以下“VOC”と略)とその他の化学物質との区別について以下のように説明されている。①大防法上のVOC 大防法の定義では、VOCについて、“排出口から大気中に排出され、または飛散したときに気体である有機化合物”(法第2条)という定性的な表現になっている。環境省が毎年発表する環境白書では、“インキ、ガソリン及び溶剤(シンナー等)等に含まれるトルエン、キシレン等の揮発性を有する有機化合物の総称。浮遊粒子状物質注1)及び光化学オキシダント注2)の生成の原因物質の一つ。”と説明されている。 同小委員会の資料では、化学物質を図1のように分類してその他の化学物質と区別した説明を付している。注1)浮遊粒子状物質:(Suspended Particle Matter、SPM)大気中に浮遊する粒子状の物質(浮遊粉じん、エアロゾルなど)のうち粒径が10μm以下のものをいう(μm=100万分の一)。注2)光化学オキシダント:(Photochemical Oxidant)工場・事業場や自動車から排出される窒素酸化物(NOx)やVOCなどが太陽光線を受けて光化学反応を起こすことにより生成されるオゾンなどの総称で、いわゆる光化学スモッグの原因となっている物質。強い酸化力をもち、高濃度では眼やのどへの刺激や呼吸器に影響を及ぼすおそれがあり、農作物などにも影響を与える。オゾン、パーオキシアセチルナイトレート等の酸化性物質。二酸化窒素(NO2)は除く。②温室効果ガスとVOCとの関係 6種類の温室効果ガス注3)のうち大防法上のVOCに含まれる物質は、HFCsとPFCsの2種類。この2物質の温室効果ガス排出量全体に占める割合は小さく注4)、VOC排出量全体に占める割合も小さい注5)。注3):温室効果ガス:(Green House Gas,GHG)① 二酸化炭素(NO2)、②メタン(CH4)、③一酸化二窒素(N2O)、④ハイドロフルオロカーボン(HFCs)のうち政令で定めるもの、⑤パーフルオロカーボン(PFCs)のうち政令で定めるもの、六ふっ化硫黄(SF6)の6種類(「地球温暖化対策の推進に関する法律」第2条第3項)。注4)温室効果ガス排出量全体(2012年度の速報値)に占めるHFCsの割合は1.5%、PFCsの割合は0.2%。注5)VOC排出量全体に占めるHFCsの割合は約1%、PFCsの割合は0.05%未満。ただし、オゾン自身は温室効果を有することに留意。③光化学オキシダント及びSPMの健康影響と VOCによる影響 a)光化学オキシダントは直接健康障害(高濃度では粘膜を刺激し、呼吸器へ影響等)を引き起こす原因物質。大気中のVOCやNOxが太陽光を受けて光化学反応を起こし、オゾンなどの光化学オキシダントを発生。 b)SPMは直接健康障害(呼吸器疾患等)を引き起こす原因物質。大気中のVOCやNOxが太陽光に反応して出来た粒子はSPMの一部を構成注6)。注6)SPMは、ばいじんなど既に粒子としての性状をもつ「一次粒子」と、窒素酸化物、硫黄酸化物、塩化水素、炭化水素類などガス状の物質が大気中での光化学反応等により粒子化する「二次生成粒子」との分類される。VOCは二次生成粒子に寄与しているとの指摘。(2)VOC発生状況:国内①VOC排出量(日本全体) 約250万トン/年(2010年推計値)。内訳は、工場、事業所等の固定発生源由来が約80万トン/年、自動車、船舶等の移動発生源由来が約20万トン/年、森林等の植物由来が約150万トン/年。なお、越境によるVOC飛来量は不明。 推計データによれば、固定発生源由来、移動発生源由来いずれも排出量は毎年減少。②VOC排出量(地域別、固定発生源由来) 47都道府県の合計排出量は約78万トン/ 年(2011年ど推計値)。このうち、日本全体の5%以上の排出量がでている自治体は、愛知県(約5.3万トン/年)、東京都(約4.4万トン/年)、神奈川県(約4.3万トン/年)。人口が多い自治体は、排出量が多い傾向。③固定発生源由来VOC排出量(用途別、業種別) 固定発生源からの排出量は約78万トン/年(2011年度)。このうち、塗料の使用に伴う蒸発29万トン/年)と燃料の貯蔵・出荷等に伴う蒸発(15万トン/年)で固定発生源全体の排出量の半分超。上記10番目までの用途で固定発生源全体の排出量の9割超。また、業種別に見ると、燃料小売業11万トン/年)、輸送用機器製造業10万トン/年)、建築工事業(9万トン/年)からのVOC排出量が多く、これら3業種で固定発生源全体の1/3超(図2)。 ④VOC(非メタン)、光化学オキシダント及び SPM濃度(日本全体) 非メタン炭化水素注7)の濃度は、1978年度以降一貫して減少傾向。固定発生源及び移動発生源のVOC排出量の削減効果が現れているとの評価がある。注7)非メタン炭化水素:(Non-Methane Hydrocarbons、NMHC)炭化水素のうち、光化学反応性を無視できるメタンを除いたもので、VOCの一部(78万トン注32万トン(40%、2011年度)。非メタン炭化水素以外のVOCとしては、アルコール類やアルデヒド類などの含酸素化合物やハロゲン化合物質など。測定技術上、アルデヒド類などの含酸素化合物質に対して感度が低いこともあり、大気汚染の常時監視測定局では、非メタン炭化水素を測定。 光化学オキシダントの濃度は、1980年度から2010年まで漸増傾向。越境汚染やタイトレーション効果の低下注8)が近年(1990年~2011年)の漸増傾向の原因として指摘6)。2011年度及び2012年度は減少傾向に転換。注8)タイトレーション効果:(Titration Eff ect)オゾン(O3)は一酸化窒素(NO)と反応し、二酸化窒素(NO2)と酸素(O2)に分解(NO+O3→NO2+O2)するためオゾン濃度が低下するが、NOxの排出量削減により、NOによるオゾンの分解量が減少すること。SPMの濃度は、1974年度の測定開始以降、概ね漸減傾向。⑤VOC(非メタン)、光化学オキシダント及び SPM濃度(地域別注9))(本項は略)注9)非メタン炭化水素の濃度及び光化学オキシダントの濃度については、環境省の光化学オキシダント調査検討会において、詳細な分析がなされており、その一環で、地域別濃度の推計値が存在。(3)越境によるVOCの日本への影響 中国国内におけるVOC年間排出量(固定発生源由来+移動発生源由来)は2,500万トン以上(中国国内の植物由来VOC排出量については把握できていない)。 九州地域では、地域内でのオキシダント生成反応が解析に極力影響しない0~8時の平均濃度において、 VOC排出抑制の自主的取組についての最近の状況については、本シリーズにおいて、2013年11月8日に経済産業省が開催した「産業構造審議会 産業技術環境分科会 産業環境対策小委員会(第1回)」の情報を紹介した1、2)。 その小委員会の第2回会合がこのほど開催されてその後の情報に基づいて各種の検討が行われた(2014年4月11日)3)。今回はその会合で検討された主要なトピックスを紹介する(写真1)。<図1>大防法上のVOCと他の化学物質の区別3a) <図2>固定発生源由来のVOC排出量(業種別、2011年度)5) <図3>自主的取組における全国のVOC排出量の推移3c)<写真1>経済産業省作成のチラシ「有機溶剤管理、適切ですか?」3d)