ブックタイトルメカトロニクス5月号2014年

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メカトロニクス5月号2014年

50 MECHATRONICS 2014.5日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力ESD に関するユネスコ世界会議~「国連持続可能な開発のための教育の10 年」の最終年を迎えて~【第146回】■「国連持続可能な開発のための教育」とは「 国連持続可能な開発のための教育」の概要については、内閣官房および文部科学省のホームページで要約されており、以下にその説明を紹介する。1. 内閣官房ホームページの解説 内閣官房のホームページでは以下のように説明されている3)。 “「持続可能な開発」は、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような社会づくりのことを意味しています。即ち、環境の保全、経済の開発、社会の発展を調和の下に進めていくことを意味します(図1)。 その取組にあたっては、環境保全や資源の過剰利用の抑制の視点とともに、貧困の克服、保健衛生の確保、質の高い教育、性・人種による差別の克服等への配慮が必要とされています。 「持続可能な開発」のためには、一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革することが必要とされており、そのための教育が、「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development、以下「ESD」)」です。ESDの目標は、すべての人が質の高い教育の恩恵を享受し、また、持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれ、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような行動の変革をもたらすことです。”2. 文部科学省ホームページの解説 文部科学省のホームページには日本ユネスコ国内委員会としての欄が設けられている。ユネスコは注1)国連からESDの推進機関に指定されているので、ESDに関する情報が豊富に掲載されている注2)。以下に同欄に記載されているESDの基本的な説明を紹介する4)。注1)ユネスコ(国際連合教育科学文化機関、United NationsEducational, Scientifi c and Cultural Organization、UNESCO):国際連合の専門機関の一つ。諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とする組織。注2)日本ユネスコ国内委員会(Japanese National Commissionfor UNESCO):「国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)憲章」第7条に示す「国内協力団体」として、ユネスコ加盟国が、教育、科学及び文化の事項に携わっている自国の主要な団体・者をユネスコの事業に参加させるために設立するものであり、我が国では、「ユネスコ活動に関する法律」第5条に基づき昭和27年(1952年)に設置された。(1)ESDとは? 今、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。 つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育です。 ESDの実施には、特に次の二つの観点が必要です。①人格の発達や、自律心、判断力、責任感などの人間 性を育むこと②他人との関係性、社会との関係性、自然環境との関 係性を認識し、「関わり」、「つながり」を尊重できる 個人を育むこと そのため、環境、平和や人権等のESDの対象となる様々な課題への取組をベースにしつつ、環境、経済、社会、文化の各側面から学際的かつ総合的に取り組むことが重要です。ESDの概念図は図2のように示されますが、関連する様々な分野を“持続可能な社会の構築”の観点からつなげ、総合的に取り組むことが必要です。(2)ESDで目指すこと①ESDの目標●全ての人が質の高い教育の恩恵を享受すること●持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれること●環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような価値観と行動の変革をもたらすこと②育みたい力●持続可能な開発に関する価値観(人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、機会均等、環境の尊重等)●体系的な思考力(問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方)●代替案の思考力(批判力)●データや情報の分析能力●コミュニケーション能力●リーダーシップの向上③学び方・教え方●「関心の喚起 → 理解の深化 → 参加する態度や問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促すという一連の流れの中に位置付けること●単に知識の伝達にとどまらず、体験、体感を重視して、探求や実践を重視する参加型アプローチをとること●活動の場で学習者の自発的な行動を上手に引き出すこと④我が国が優先的に取り組むべき課題 先進国が取り組むべき環境保全を中心とした課題を入り口として、環境、経済、社会の統合的な発展について取り組みつつ、開発途上国を含む世界規模の持続可能な開発につながる諸課題を視野に入れた取組を進めていく。(「我が国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画」より)(3)ESD QUEST ESDを分かりやすく説明するストーリーブックが文部科学省より発行されている5)注3)。注3)問合せ先: 文部科学省国際統括官付 ユネスコ振興推進係、TEL:03-5253-4111(内線2602)E-mail:jpnatcom@mext.go.jp■ESDに関する過去の経緯1. 国際的な動向 ESDは、教育及び持続可能な開発に関するそれぞれの世界的な取組に由来している。それらの関連する事項を経年的に紹介すると、以下のような事項が本問題に関連して引用されている3)。●1948年12月:「世界人権宣言」 「世界人権宣言」が国連において採択された。人権が世界的レベルで包括的に規定されており、教育について“すべて人は、教育を受ける権利を有する”とされた。●1987年:「持続可能な開発」 ブルントラント(当時のノルウェー首相)を委員長とする「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書「われら共有の未来(Our Common Future)」の中心的な考え方として、「将来の世代のニーズを満たしつつ、現在の世代のニーズも満足させるような開発」という「持続可能な開発」の概念が取り上げられた。●1990年:「万人のための教育世界宣言」の採択初等教育の普遍化、教育の場における男女格差の是正、識字率の改善などを目標とした「万人のための教育」(Education for All、EFA)の実現をうたっている。●1992年:国連環境開発会議(地球サミット) 持続可能な開発についての国際的な取組に関する行動計画である「アジェンダ21」が採択され、その第36章「教育、人々の認識、訓練の推進」の中で持続可能な開発のための教育の重要性とその取組の指針が盛り込まれた。 このような教育と持続可能な開発に関する取組が世界的に行われる中で、ESDの概念が深められ、国連持続可能な開発委員会においてユネスコが中心となり、持続可能な開発のための教育のあり方について検討が進められた。● 2002年:持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット) 「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画」 「国連持続可能な開発のための教育の10年」については、本連載の第117回(2011年12月号)において紹介し、“(その組織的活動の)最終年が2014年であり、最終年会合が日本で開催される”ことを説明した1)。その国際的な行事の準備が現在進められているので、改めて関連情報を整理して最近の状況を以下に紹介する。 また、「持続可能な開発」については、本連載の第115回で2011年版の環境白書を紹介するときに、やや詳細に触れているので併せてご参照頂きたい2)。<図1>「持続可能な開発」における社会・経済・環境の関係3) <図2>ESDの概念図4)