ブックタイトルメカトロニクス2月号2014年

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概要

メカトロニクス2月号2014年

MECHATRONICS 2014.2 11所 在 地:U R L:事業内容:埼玉県さいたま市http://www.eddyplus.co.jp塗装機器開発/攪拌装置開発/特許ライセンス許諾/特許ライセンス先の開拓および選定/ロイヤリティの管理、など。株式会社 エディプラス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・繰り返し、最後は壊れてしまうのでほとんど残っていません。2年ほど失敗が続き、羽根の改造ではダメだと思うようになり、プロペラ型飛行機のプロペラ部分についているスピナにヒントを得て、新たな形状を考えました。最初は加工の楽な樹脂でつくっていたのですが、限界を感じ金属でつくることにしました。しかし、金属加工は人の手ではほとんど何もできないので、機械加工をやっている友人がいたためそれを頼って、端材などを利用して非常に安価に試作品の製作をしてもらいました。 友人の力添えで色々な試作品をつくり試験を行った結果、様々な知見を得ることができましたが、そこでわかったことは羽根がついていてはどうしてもごみが出てしまうことでした。そこで、次にチャレンジしようと考えたのが、半球型のブロック状のものに斜めの螺旋状の穴をあけ、流体を巻き込むような設計にしてみることでした。それを友人に依頼したのですが、真っ直ぐなL 字型の穴を空けたものをつくって送ってきました。友人曰く、「言うとおり物を機械加工でつくるのがどれだけ大変かわかるか?いつもより少し軟質の真鍮でつくっているから自分でヤスリを使って削ってみろ」ということでした。しかし、真鍮とはいえ金属です、とても手では削れず、そのまま放置していました。 その後、放置したことに負い目を感じ友人には連絡を控えていたのですが、2 年半以上進めてきた開発にもなかなか先が見えず、そろそろ潮時かなと考えるような時期になってきていました。とはいえ心残りで、「これで最後」というアイデアの試作をしようと友人に連絡を取ったのですが、「真鍮でつくった試作品を回したのか」といわれました。それでは最後にまだ検証していない試作品をすべて回してから、最後の試作をお願いしてこの開発を終わりにしようと思いました。 そして、放置していた加工前のL字穴のままの真鍮でつくった試作品を回してみたところ、驚くことに予想以上に良く混ざっていました。それを見た瞬間、「遠心力を利用して攪拌ができる!」と気がついたのです。本当に偶然の発見でしたが、原理さえ解明できればそこからはトントン拍子に製品化まで進んでいきました。わずか2ヶ月ほどで、試験機をヤマテックの工場ラインに入れて検証し、問題もなく好結果を出せるということが分かったので、3ヶ月後には量産に対応できる製品をラインに投入していました。 このように、羽根の無い遠心型撹拌機の技術は、思わぬところから発見できた技術で、羽根が無いのでごみが出ないだけでなく、安全性に優れ、省エネや高品位といった特徴をもっています。また素材は、金属/樹脂/ゴム/セラミック/カーボンなど、硬質材から軟質材まで多様な材質に対応可能で、目的に応じ、小型のものから大型のものまで様々な大きさにも対応できます(写真1)。幅広い応用性により、様々な業界で応用することができる技術だと考えています。 羽根の無い遠心型撹拌機のライセンス 契約に関する事例などについてお聞か せ下さい村田:現状、ライセンス契約は数社と取り交わしていますが、製品のラインアップが豊富なのは、先程も少しお話した、海外の特許運用をお願いしているIPMSという会社になります。IPMSと当社は、相互技術交流をしており、遠心攪拌技術に関して広い知見をもっているライセンス企業です。IPMSの遠心攪拌関連商品は、『M-Revo(エムレボ)』という商標で販売しており、今までにない優れた撹拌力を実現します(写真2)。 同製品は、①撹拌体を回転させると吐出口に遠心力が作用する、②撹拌体流路内の液体はこの遠心力により吐出口(a)から吐出される、③それに伴い吸入口(b)から流体を吸い込むことで、竜巻状の吸い込みのうず流(C)が発生し、隅々まで撹拌流がいきわたる、④吐出するエネルギーを竜巻状の吸い込み流でエネルギーとして再利用する「プッシュ→プル」流が発生し、高効率の撹拌が可能になる、⑤撹拌体から撹拌流には脈動(パルス)があるため、角や影の部分にも撹拌流がいきわたる、というような「プッシュ→プル」「うず流」「パルス」の3つの力を使った新しい理論の撹拌機です(図2)。 特徴としては、反動による振られが非常に少ないため、手持ちでの撹拌も安全で疲れないことや、突起部が無いためキャビテーションがなく(標準型)、容器や設備の接触に起因する金属ごみなどの発生がほとんど無いなど、優れた作業安全性/混ぜた対象物の安全性を実現している。遠心理論が生み出す力で低い流速でも隅々まで確実に混ざり、材料劣化も低減できることや、四角や不定形の容器でもよく撹拌できるなど、高い撹拌混合性能/高品位な攪拌性を実現していることが挙げられます(写真3)。 今後の展開についてお聞かせ下さい村田:当社の保有する撹拌技術は、高付加価値のある技術だと思いますので、それを評価して頂けるような取り組みを国内外で進めていきます。国内では、ようやくこの技術が認知され始め、大手の企業などにも導入され始めています。海外においても、権利化が進んできており、それに伴い導入を検討したいという企業が出始めてきている状況です。また、生産拠点を海外に移したいと検討されている中小企業も増えているようなので、そういったところでもお手伝いできると考えています。このような、国内外の動きに対応するライセンス契約を柱に事業展開を進めていきます。 それから、工業排水の水質浄化を目的とした実証実験を、2011 年からヤマテックやIPMS などと共同で行い、曝気撹拌を行うエアレーションタイプで撹拌を行うと藻の成長が抑制されることを観察しました(写真4)。最近では、湖沼などの水質悪化が問題視されていますが、この実証実験の成果により、湖沼などの浄化、環境改善に当社の撹拌技術が有効ではないかと考え、さいたま市の協力を得て同市内の岩槻和土住宅公園の池において、夏季の水質劣化、アオコの発生抑制に対する実証実験を2013年8月より開始しました(写真5)。日程としては、2014 年8 月まで実験の継続が決まりましたが、10 月までの約3ヶ月間で、一定の効果が出ていることを確認しています。この技術を、社会貢献にも活かせる技術にしていきたいと考えています。 今後も、このような取り組みを進めながら幅広い分野に当社の保有する撹拌技術を発信し、新たなビジネスチャンスを模索していきたいと考えています。本日はお忙しい中ありがとうございました。図2 撹拌の理論図abc写真3 『M-Revo(エムレボ)』による撹拌の様子写真4 工場排水試験と曝気の様子写真5 水質浄化実証試験の様子