ブックタイトルメカトロニクス2月号2014年

ページ
10/56

このページは メカトロニクス2月号2014年 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

メカトロニクス2月号2014年

10 MECHATRONICS 2014.2 御社の概要についてお聞かせ下さい村田:当社は遠心式撹拌機の開発販売のために、2010 年1月に設立しました。私は、各種工業塗装・部品組立/電子部品設計・製造などを行うヤマテック株式会社(以下、ヤマテック)という親族が経営する会社で、20年ほど電子機器部門の工場長をしていたのですが、2006年6月に塗装部門の工場長が勇退するということでその後を引き継ぐ形で転属され、当社はその工場の現場改善を行うために始めた撹拌機の開発が会社設立のきっかけになりました。 私自身、塗装部門の仕事は初めてで知識もほとんどありませんでしたが、今まで積み上げてきたキャリアがありますので何とかなると思い、まずは工場の現場改善から手をつけていこうと考えました。工業塗装工場はどの企業もごみの付着、混入による塗装不良(ごみ、ブツ不良)対策に莫大なコストをかけ、「塗る」という技術の向上を絶えず考えています。しかしその反面、職人的要素が今でも色濃く残る分野でもあり、塗料希釈撹拌といった塗料の原液を使いやすい粘度に調整する作業は、何十年も昔から変わらない作業が行われていたりもします。工業用塗料は、着色材の顔料系が下に沈む傾向にあり、そのため羽根の付いた撹拌機を使用して底部に溜まった顔料を浮かせるように混ぜる必要があります。その時に、どうしても缶の底や側面に羽根が接触して容器を削ってしまうのです。 私が着任した時も、工場内で塗料の缶に羽根が擦れる音をよく聞き、これでは擦れた時に缶が削れ、そのごみが塗料に入ってしまうのではないかと作業者に聞きましたが、ごみは出ていないという返答でした。しかし、よくよく調べるとやはり混入は多発していました。この事実から、ごみの出ない撹拌機の開発を進めたいと考え、当初はヤマテックとして開発することを会社に進言したのですが、会社からは承認が降りず、「個人としてやるのであれば構わない。また、試験は社内設備を使っても良い。うまく製品が開発できれば会社の方で購入する。」とのことで、個人で開発を始めました。そして、 まったく新しい理論で撹拌技術を開発した株式会社エディプラス。その撹拌技術で国内外の特許を取得し、ライセンス契約などで事業展開する同社の概要と撹拌技術、ライセンス契約の事例などについて、代表取締役 村田 和久 氏にお話を伺った。株式会社 エディプラス代表取締役村田 和久 氏高付加価値を生み出す羽根の無い遠心型撹拌機~安全に配慮した形状で優れた撹拌力を実現~2年半ほど試行錯誤し、ようやく開発に成功した製品が、“ 羽根の無い遠心型撹拌機”になります。 2009年6月には、元工場長の助言などもあり特許の申請を行い、早期審査により同年12月には特許を取得することができました。また、数値などは一切記入しない基本特許といわれているようなもので取得できたので、非常に幅広い権利が取れる形になりました。この特許は、私の個人名で申請しており、もし取得することができればヤマテックとして事業を展開していきたかったのですが、私の父にあたるヤマテックの会長から承認が降りず、やはり個人でやるのであれば構わないということで、株式会社エディプラスを設立しました。私自身、まだヤマテックの塗装事業部に在籍しており、エディプラスは別法人ということで事業を行っています。 2010 年6月には、国内特許だけでなく、PCT 海外特許出願と台湾特許出願も行っています。さらに、その他の海外にも出願を考えたのですが、当社のような個人レベルの会社で行うのは金銭的にもそうですが非常に難しいということで、(株)IPMS(以下、IPMS)というこの特許の運用と製品の販売を目的に立ち上げた会社を通じて出願しており、当社は成功報酬という形で権利を譲渡しています。現在では、海外13ヶ国に出願しており、韓国、中国、ロシア、カナダ、シンガポールまで権利化が完了しています。 2011 年8月には、ヤマテック久喜事業所内に開発センターを設立し、同事業内にあった本社を埼玉県さいたま市に移転しました。そして、羽根の無い遠心型撹拌機は様々な賞に受賞しており、最近では2013 年度に文部科学大臣表彰『科学技術賞(技術部門)』を受賞しています。 この技術は、塗料の撹拌を行うために開発したものですが、幅広い分野に活用することができます。そのため当社は、ライセンスを商品にした新たなビジネスを柱に事業展開を進めています(図1)。 羽根の無い遠心型撹拌機の開発につい てもう少し詳しくお聞かせ下さい村田:最初は、当時使用していたものに変わるごみの出ない撹拌機はないものかと、色々調べることから始まりました。しかし、結局見つからないので自社開発を提案しましたが、承認は降りませんでした。でも、現状に納得できなかったので、費用と時間はすべて私もちということで個人での開発をスタートさせました。費用は僅かなので、安い材料をホームセンターなどで探し手づくりしました。そこは厳しかったですが、個人開発の恩恵として、期限の設定が無く自分が納得するまで続けられたという点はありがたかったです。 開発は、まず「ごみの出ない羽根」を目指しました。突起=ごみが出てしまうので、まずは羽根形状やガードの工夫をし、2年ほど色々な羽根をつくりました。費用が余りなかったので、100本ほど作った試作品は改造を図1 当社ライセンス契約のしくみ写真2 『M-Revo(エムレボ)』の外観写真1 羽根の無い遠心型撹拌機のラインアップ一例