ブックタイトルメカトロニクス1月号2014年

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概要

メカトロニクス1月号2014年

46 MECHATRONICS 2014.1日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力VOC 排出抑制の自主的取組の成果と課題~(1)改正大気汚染防止法によるVOC 排出抑制の経緯~【第142回】■ VOC 排出抑制対策の経緯(1)光化学オキシダント 光化学オキシダントとは、工場、事業場や自動車から排出される窒素酸化物(NOx)や非メタン系炭化水素類(HC)を主体とする一次汚染物質が太陽光線の照射をうけて光化学により二次的に生成されるオゾンなどの総称で、光化学スモッグの原因となっている物質である。光化学オキシダントは強い酸化力を持ち、高濃度では眼やのどへの刺激や呼吸器に影響を及ぼし農作物にも影響を与える。(2)有害大気汚染物質の「自主管理」 大気汚染防止法が1996 年に改正されたときに、12 物質の有害大気汚染物質について、70 以上の業界団体が「自主管理」に参加した。その結果は、第1期(1997 ~ 1999 年)、第2期(2001 ~ 2003 年)ともに目標の平均30%削減を上回る排出削減実績を達成した。(3)今回の大気汚染防止法改正による「自主的取組」 今回の改正大気汚染防止法は、2004 年5 月に成立し、2006 年4 月から施行された。 この法改正における最大の特徴は、わが国の環境法体系で初めて、「法規制」と「自主的取組」の双方が組み合わされていることである。そのVOC排出抑制の目標は、2010 年度までに、2000 年度の排出量を3 割程度削減することとされた。■改正大気汚染防止法の骨子 2004 年改正の大気汚染防止法の骨子は、以下の通りである。(1)全体枠組み・枠組み:法規制と業界の自主的取組とを適切に組み合わせ、VOC の大気排出量を削減すること。・目標:2000年度の大気排出量を基準として、2010 年度までに、排出量を3 割削減すること。・法の見直し:2010 年度時の目標達成状況を受け、法規制・自主的取組のあり方を産業構造審議会・中央環境審議会で検討する。(2)対象物質・VOC の定義:排出口から大気中に排出され、また飛散した時に気体である有機化合物。環境省は“VOCに該当する主な物質”として100種のVOCのリストを発表している。・VOCではない物質の定義: 政令により“VOC ではない除外物質”として8 物質(メタンおよびフロン類)が指定されている。(3)法規制・対象施設:VOC 排出量が多いと推定される6 種類の施設類型のうち、裾切り基準値以上の大規模施設。・排出基準:排出口における濃度規制値・事業者の義務:既存施設の使用または新設施設の設置に関する届出、年2回以上の測定、排出基準の遵守。(4)自主的取組・対象施設:法による施設類型や規模の指定はしない。業界団体が策定する自主行動計画への企業の自主的な参加等、実情に応じ適切な対策を講じる。・排出削減目標:業界団体等が策定する自主行動計画にて目標を設定。(5)VOC に関する法規制対象の6 つの施設類型 VOCの法規制の対象として、VOC排出量が多いと思われる代表的な施設類型として、以下が定められた(法第2 条第5 項、施行令第2 条の3 に係る別表第1の2)。 それぞれの施設の各項について(「塗装」と「接着」の場合は2項目、外形裾切り基準と排出基準値とが別々に定められている。①塗装施設および塗装後の乾燥・焼付施設 VOC を溶剤として使用する化学製品の製造の用に供する乾燥施設(VOC を乾燥させるためのものに限る。)②化学製品製造における乾燥施設 ・吹付塗装(吹付塗装を行うものにかぎる。) ・塗装の用に供する乾燥施設(吹付塗装および電着塗装に係るものを除く。)③工業用洗浄施設および洗浄後の乾燥施設 工業の用に供するVOC による洗浄施設(当該洗浄施設において洗浄の用に供したVOC を蒸発させるための乾燥施設を含む。)④印刷施設における印刷後の乾燥焼付施設 ・印刷の用に供する乾燥施設(オフセット輪転印刷に係るものに限る。) ・印刷の用に供する乾燥施設(グラビア印刷に係るものに限る。)⑤VOC の貯蔵施設 ガソリン、原油、ナフサその他の温度37.8 度において蒸気圧が20 キロパスカルを超えるVOC の貯蔵タンク(密閉式および浮屋根式(内部浮屋根式を含む。)のものを除く。)⑥接着剤使用施設における使用後の乾燥・焼付施設 ・印刷回路用銅張積層板、粘着テープもしくは粘着シート、はく離紙または包装材料(合成樹脂を積層するものに限る。)の製造に係る接着の用に供する乾燥施設。 ・接着の用に供する乾燥施設(前項に掲げるおよび木材または木製品(家具を含む。)の製造の用に供するものを除く。)■「ベストミックス」制度の成果 大気汚染防止法の改正によるVOC 排出抑制の自主的取組は2006 年度より始まった。当初の目標は、“2010 年度までに全国のVOC 総排出量を2000 年度に比べて3 割程度削減させること”とされていた。 この目標を達成するために、法規制と自主的取組を適切に組み合わせた制度(いわゆる「ベストミックス」)が実施された。(1)環境政策の手法 環境政策の手法について、「第3 次環境基本計画」1)では、6 種類の事例が同計画の“第2 部 今四半世紀における環境政策の具体的な展開”の“まえがき”で紹介されている。 この考え方は「第4 次環境基本計画」2)においても引き継がれており、「法規制」と「自主的取組」については以下のような説明が付されている(“第1部環境の状況と環境政策の展開の方向、第3章環境政策の原則・手法”)。①直接規制的手法: 法令によって社会全体として達成すべき一定の目標と遵守事項を示し、統制的手法を用いて達成しようとする手法である。環境汚染の防止や自然環境保全のための土地利用・行為規制などに効果がある。②枠組規制的手法:(略)③経済的手法:(略)④自主的取組手法: 事業者などが自らの行動に一定の努力目標設けて対策を実施するという取組によって政策目的を達成しようとする手法である。事業者などがその努力目標を社会に対して広く表明し、政府においてその進捗点検が行われるなどによって、事実上社会公約化されたものとなる場合等はには、さらに、大きな効果を発揮する。技術確信への誘因となり、関係者の環境意識の高揚や環境教育・環境学習にもつながるという利点がある。事業者の専門的知識や創意工夫をい 揮発性有機化合物(VOC)は、光化学オキシダント生成の原因物質 の一つであり、そのVOCの排出削減によって光化学オキシダントによる大気汚染の改善をはかるよう2003年頃より本格的な検討が開始された。 その結果、改正された大気汚染防止法に基づく排出規制の実施が2006年より開始されたが、それに伴うVOC排出抑制の自主的取組が実施され、その結果の検証をへて、当初の削減目標が予想以上に好結果で達成されことが判明した。 これを踏まえて今後のVOC排出抑制のあり方について検討するために、経済産業省に新しい検討組織が設置され、その第1回会合がさる2013年11月8日に開催された。 今回はVOC排出抑制の諸問題について、過去の経緯と今後の動きを紹介する。<図1>VOC自主的取組支援ボード4)産業構造審議会WG検討・評価施策提言経済産業省企業・事務所報告(業界団体に所属していない場合)業界団体報告助言調査集計・報告集計・報告集計・報告自主的支援ボード(社)産業環境管理協会