ブックタイトルメカトロニクス11月号2013年

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概要

メカトロニクス11月号2013年

MECHATRONICS 2013.11 61的責任投資(SRI)注19)を行う際にこれを参考にすることで、環境関連ビジネスの市場が拡大することにつながると期待される。注19)社会的責任投資(Social Responsible Investment、SRI):従 来からの株式投資の尺度である企業の収益力、成長性等の判断に加え、各企業の人的資源への配慮、環境への配慮、利害関係者への配慮などの取組を評価し、投資選定を行う投資行動。 特に温暖化分野では、2000年にカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)注20)が設立され、世界の機関投資家を代表して企業の気候変動に関する情報開示を要請し、企業や政府の低炭素化の取組を促進する活動を行っている。注20)カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CarbonDisclosure Project、CDP):世界の機関投資家等が代表して企業の気候変動に関する情報開示を要請し、企業や政府の低炭素化を促進する活動を行っている団体。 この活動に署名参加する機関投資家の数とその保有する資産規模は、2002 年当時の35機関4.5兆ドルから、2012 年には655 機関78兆ドルに拡大している。 同プロジェクトは、アンケートにより、低炭素社会の到来に対する企業の対応(リスクへの備え、事業機会としての活用など)を問い、企業を情報開示と実績の2 つの視点から点数付けしている。「投資家の立場から評価する企業の低炭素化への取組評価(Investor CDP)」は2002 年より開始し、2012年(平成24 年)時点では全世界で2418 社(日本企業は233 社)が回答している。2012 年のGlobal500(世界の時価総額上位500企業)の中で、日本企業は40社が対象となり、このうち35社が回答している。 現在、新たな温室効果ガスの排出量算定・表示・報告手法として「スコープ3」という企業のサプライチェーンにおける排出を含める概念が導入されつつある。 この開示手法は、例えば企業が、購入物品や加工、販売製品の使用段階など、自社事業の活動だけでなく、サプライチェーンの排出量を開示することを求めており、そのルールづくりは国際的に活発に議論されている仕組みとなっている。(p42)(2013.9.16 記)<参考資料>1)環境省編:「平成25 年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」日経印刷(株)(2013.6)2)UNEP:「Green Economy Report = Towards a GreenEconomy : Pathway to Sustainable Development andPoverty Eradication」(2011)3 )U N E P:「T h e E c o n o m i c s o f E c o s y s t e m s &Biodiversity」(2010)者の選択をより環境に配慮したものにするための仕組みづくり等が必要である。 世界全体で、年GDP の2 %(2010年時点で1.3兆ドル)を2050年までの間、農業、漁業、林業、製造業、運輸業、建設業、エネルギー業、観光業等に投資することによって、低炭素で資源効率の高いグリーン経済へと移行することができると提言している(図1)2)。(2)「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」 自然資本を評価する取組としては、UNEP やドイツ銀行等による「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」の報告書が、(先に紹介したように)2010年に発表されている。 同報告書は、“生物多様性版スターン・レビュー”と称され、経済学的な観点から生物多様性の喪失について世界レベルで研究された成果を取りまとめたもので、全体で5 部構成となっている。2010 年10月に愛知県名古屋市にて開催された生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(COP10)では、全5部をまとめた「TEEB 統合報告書」が公表された注15)。注15)TEEB(The Economicsof Ecosystems & Biodiversity):生態系と生物多様性の経済学。 TEEB は、食料や水の供給、気候調整や水質浄化などの自然の恩恵(生態系サービス)を経済的に評価し、自然の価値が認識されて人々の意思決定に反映されていくことを目指している。個別の生態系サービスについて、その経済的な価値を評価することにより、生物多様性を保全した場合に享受する利益と生物多様性が損失した場合の経済的な損失を算出する試みを行っている3()写真6)。(3)OECD の「グリーン成長」 グリーン経済に近い概念として、経済協力開発機構(OECD)の「グリーン成長(Green Growth)」注16)がある。注16)グリーン成長(Green Growth):経済協力開発機構(OECD)によって提唱された、経済的な成長を実現しながら私たちの暮らしを支えている自然資源と自然環境の恵を受け続けるという考え方。OECD は、2011 年5 月に「Towards Green Growth」(グリーン成長へ向けて)を発表した。 グリーン成長は、経済成長と環境保護の相乗効果により、経済を再構築しつつ、資源節約だけでなく、自然資本の持続可能な管理への投資を成長の原動力にするということに焦点を当てている(写真7)。(4)リオ+ 20 を中心とするグリーン経済の  最近の動向 グリーン経済は、2012年6月に開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+ 20)」でも、2つのテーマのうちの1 つとして取りあげられた。 同会議は、2012 年6 月20 日から22日までブラジルのリオデジャネイロで開催され、国連加盟188 ヵ国及び3 オブザーバー(EU、パレスチナ、バチカン)から97 名の首脳及び多数の閣僚級(政府代表としての閣僚は78 名)が参加したほか、各国政府関係者、国会議員、地方自治体、国際機関、企業等から約3 万人が参加した。 同会議の成果文書注17)は、首脳及び閣僚級による3日間の議論を経て6月22日の夜に採択された(写真8)。注17)「われわれの求める未来」:Outcome of the conference“The future we want”(2012.6.19) 同文書の主な内容は、①グリーン経済は持続可能な開発を達成する上で 重要なツールであり、それを追求する国による共通の取組として認識すること。②持続可能な開発に関するハイレベル・フォーラムを創設すること。③都市や防災をはじめとする26の分野における取組についての合意。④持続可能な開発目標(SDGs)について政府間交渉のプロセスを立ち上げること。⑤持続可能な開発に関する資金調達戦略に関する報告書を2014 年までに作成すること。などである。 同会議で我が国は、①「環境未来都市」の世界への普及。②世界のグリーン経済移行への貢献。③災害に強い強靱な社会づくり。の3 つを柱とした「緑の未来イニシアティブ」注18)を表明した。注18)緑の未来イニシアティブ:我が国が「リオ+ 20」で発表した、環境未来都市づくりやグリーン経済への移行など我が国が特に経験と知見を有し、国際社会から我が国の貢献が期待されている分野に焦点を当てて策定したもの。 同イニシアティブの下、7月には「世界防災会議in東北」を東北3県(岩手県、宮城県、福島県)で開催したほか、12月にはグリーン経済移行に向けた人材育成を後押しするための「緑の未来協力隊」を立ち上げた。また、リオ+ 20 において我が国の優れた環境技術や省エネ技術、自然資本の持続的利用による農林漁業などの恵みを発信すること等を目的に、政府・民間企業等が協力して展示やセミナーを開催した(6月13 日から24 日までに、延べ18,127 名が来場)。(p41)(5)グリーン経済の構築につながる国際的な取組  ~投資家向け情報開示を例に~ 環境分野への投資を促進するためには、投資家等が投資判断の参考にする企業情報の開示促進に取り組むことが有効である。現在、フランス、英国等のヨーロッパ諸国では国内法が整備され、企業の年次報告書への環境的・社会的側面の情報開示を義務付けている。また、米国、南アフリカ等でも、上場企業において、投資家保護等のために必要な環境に関する情報の開示が求められる傾向が強まっている。こうした情報開示の進展によって、機関投資家等が、社会<写真6> TEEBの「第0部:生態学と経済学の基礎」の表紙3)<写真5> UNEP「グリーン経済報告書」の表紙1)<写真7> OECDの「グリーン成長へ向けて」の表紙<写真8>採択された成果文書「われわれの求める未来」