ブックタイトルメカトロニクス8月号2013年

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概要

メカトロニクス8月号2013年

MECHATRONICS 2013.8 51 低炭素経済と環境マネジメントの統合に焦点を当てた。プロジェクトの前半はマクロの視点から環境経済について、後半は企業が取り組む環境マネジメントに重点を置いた。(3)持続可能なモノづくりを進めるうえで重要なこと 企業にとって、生産技術をはじめとする経営マネジメント全体の中で環境をどう位置付けるかが重要性を増している。大気汚染、化学物質管理、CO2排出削減など生産活動に関わる全ての環境問題を俎上に載せ、システマチックな手法でマネジメントを考えるべきということが、世界的な潮流になっている。 そうした点を踏まえ、日本の各分野のリーダー級の方々に執筆していただき、わが国のマネジメント手法を体系的に整理した。(4)各国への普及 直近では、中国では大気汚染が深刻化し、ベトナムでは河川の汚染が広がっている。わが国はかつて同様の公害問題に直面し、克服してきた経験を持つ。各国の関係者にはこうした具体的事例に対する関心は高い。日本が蓄積してきた技術やノウハウを実情に応じて移転できれば、東アジアにも環境マネジメントが広がる。(5)それを進める上での課題 一番の課題は環境マインドの不足である。中国で行った調査では、地方企業のレベルでは環境問題は関係ないという意識がまだ多い。例えば汚染物質を大気や河川に放出することが悪いという認識が定着しなければ、環境管理システムのツールを用意しても効果はない。 行政当局には、環境マインド向上には教育が重要なことは理解されている。ただ、それを社会や国民にどう広めるかが各国共通の悩みの種である。日本からの支援はまず、教える側の人材育成から始めることが必要である。専門家派遣や研修受け入れも有効だが、日本の大学で学んで帰国した後に政府などで重要な役割を担う留学生も増えてきた。(2013.5.13記)<参考資料>1)財団法人日本学術振興会のホームページhttp://www.jsps.go.jp/j-acore/14jishityu_acore.html2)化学工業日報:“(名古屋大学大学院・高桑宗右ヱ門教授インタビュー、企業の環境経営・社会の環境問題合同議論へ、マネジメントMFCAなど系統的手法で、”(2011年1月24日)3)小田切 力:「ものづくりと地球環境」化学工業日報社(2004年8月)4)小田切 力:「ものづくりと地球環境Ⅱ」化学工業日報社(2007年12月)5)小田切 力:「ものづくりと地球環境Ⅲ」化学工業日社(2009年6月)6)日刊工業新聞:“環境と資源問題、東アジアと課題解決、学術振興会低炭素社会でシンポ”(2012年1月27)7)日本情報経営学会誌:「特集:モノづくりと環境のマネジメント」Vol.31, No.4, p1-176(2011.Aug)8)日本情報経営学会誌:「特集:モノづくりと環境のマネジメント(Ⅱ)」Vol.33, No.1, p1-220(2012.June)9)高桑宗右ヱ門編著:「東アジアのモノづくりマネジメント(日本情報経営学会叢書5)」(株)中央経済社(2012.12)10)高桑宗右ヱ門編著:「モノづくりと環境のマネジメント(日本情報経営学会叢書6)」(株)中央経済社(近刊)11)高桑宗右ヱ門主編、齋二石・牛占文副主編:「」科学出版社(北京、中国)(2012.11)12)Soemon Takakuwa(Editor-in-chief),Nguyen HongSon, Nguyen Dang Minh(Co-editors):「Manufacturingand Environmental Management」National PoliticalPublishing House(Hanoi,Vietnam)(2013.1)13)化学工業日報:“(名古屋大学大学院・高桑宗右ヱ門教授に聞く、アジアに環境マネジメント普及、課題はマインド向上、まず教える側の人材育成を”(2013年4月16日)(備考)本記事の一部には、独立行政法人日本学術振興会「アジア研究教育拠点事業」の「東アジアにおけるモノづくりと環境のマネジメント」の助成を得て遂行された発表を引用している。 “近年、地球温暖化やエネルギー・資源枯渇の問題など環境問題に対する地球規模での関心が高まってきた。環境問題は地球温暖化、オゾン層破壊、有害廃棄物、酸性雨、生物多様性の減少、海洋汚染、森林の減少、砂漠化、など多岐にわたる。生産活動を含む人間の経済活動の結果、これらの深刻な問題が惹起したと考えられ、国際的な取組みが不可欠となってきた。 生産活動を中心とする製品のライフサイクル全体にわたって、資源・エネルギーが消費され、その結果として、温室効果ガスや廃棄物が排出されることから、「モノづくり」と「環境」は密接に関連しており、同時に検討することが必要である。企業の社会環境管理は、その生産活動が外部の環境に与える負荷を低減することが目的である。”(2)目次構成同書の目次構成を以下に紹介する。・第1章 東アジアにおける生産と技術のマネジメント 1.生産と環境問題 2.技術マネジメントの一環としての環境マネジメント 3.環境問題に対する取組み・第2章 わが国における環境問題と環境・省エネルギー政策 1.企業における産業公害から温暖化に係る環境管   理の支援 2.わが国の環境政策と環境ビジネス 3.省エネルギーのマネジメントと省エネ法・第3章 化学物質の管理システム 1.SAICM(国際的化学物質管理に関する戦略的  アプローチ 2.モノづくり洗浄現場におけるVOC(揮発性有機  化合物)排出抑制の自主的取組 3.家電製品におけるRoHS指令対応のマネジメント・第4章 モノづくりとライフサイクルアセスメント 1.はじめに 2.エコデザインとLCA 3.サプライチェーンでの協働によるLC高度化 4.おわりに・第5 章 ロジスティクス・サプライチェーンにおける環境負荷低減の取組み 1.ロジスティクスにおける環境負荷低減の取組み 2.持続可能なモノづくりに向けた循環型・低炭素型サプライチェーンの検討・第6章 環境マネジメントシステム 1.ISO14000シリーズの概要 2.エコアクション21と認証・登録制度・第7章 マテリアルフローコスト会計 1.マテリアルフローコスト会計の意義と国際標準化 2.マテリアルフローコスト会計のサプライチェー  ンへの導入・第8章 低炭素社会と環境経営への取組み・支援 1.経団連の低炭素社会実行計画 2.トヨタの環境経営 3.東アジアに対する環境管理に関する支援 4.企業もモノづくりと環境経営(3)各章の概要 編者の高桑教授は、各章の概要について、“はじめに”に解説されているので、その一部を以下に紹介する。・第1章 技術マネジメントとしての生産と環境のマネジメント 企業の生産活動と環境との関わりに焦点を当てて、環境マネジメントシステムの取組みについて概説。次に、技術マネジメントの観点から、生産活動における環境マネジメントの取り組みについて述べ、東アジアなどの諸外国において、環境マネジメントシステムを導入するためには、環境保全意識いわゆる環境マインドの浸透が不可欠であることを指摘。・第2章 わが国における環境問題と環境・省エネルギー政策 第2章では、はじめに産業公害から地球温暖化に至るまでの環境問題への産業界によるさまざまな取組みについて、および世界への貢献が期待される日本の環境政策と環境ビジネスの概況およびその課題について述べ、次いでエネルギーのマネジメントの観点から省エネや省エネ法を紹介。・第3章 化学物質の管理システム 第3章では、化学産業の環境安全問題の中で、適正な化学品管理を促進する国際的な枠組みとして「国際的化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)」について述べる。次に、産業洗浄の分野において、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制を行う場合の自主管理手法として、コンピュータを利用した排出管理診断システムを紹介する。さらには、EU市場で販売する電気・電子機器に含有されえる特定有害化学物質の使用を制限するためのRoHS(特定有害物質使用制限)指令にいて述べる。・第4 章 モノづくりとライフサイクルアセスメント(LCA) LCAは、製品の資源採取から、製造、使用、廃棄に至る一生を通じた環境影響を評価する技法である。本章では、モノづくりの現場におけるLCAの実例を解説する。・第5 章 ロジスティクス・サプライチェーンにおける環境負荷低減の取組み 本章では、はじめに、わが国が取り組んでいる物流分野における環境負荷低減施策について紹介、次に、持続可能なモノづくりに向けた循環型と低炭素型のサプライチェーンに関して、設計と課題について述べる。・第6章 環境マネジメントシステム 本章では、ISO(国際標準化機構)によって制定された環境マネジメントシステムの規格であるISO14000シリーズの概要を紹介したうえで、今後の課題について述べ、次いで、環境省が中小事業者などの幅広い事業者に対し環境マネジメントシステムとして推奨するエコアクション21について、その目的および概要を紹介したうえで、現状およびさらなる発展に向けての課題などについて述べる。・第7章 マテリアルフローコスト会計 第7章では、経済産業省が普及を積極的に支援している環境管理会計手法であるマテリアルフローコスト会計(MFCA)を取り上げ、はじめにMFCAの手法について概説、次に国際標準化されたMFCA(ISO14051)に言及し、サプライチェーンへのMFCAの導入の意義と問題点を分析している。・第8章 低炭素社会と環境経営への取組み・支援 本章では、はじめに温暖化対策の推薦の観点から、経団連による環境自主行動計画について述べ、別の企業の取組みとして、トヨタの環境経営について紹介し、わが国の海外への温暖化対策の支援について述べている。さらに、学・官・NPOと連携し環境と共生するモノづくりに励む産業界の例を紹介している。■今後の課題 本研究プロジェクト終了後に、高桑教授は化学工業日報社の山下裕之記者のインタビューに応じ、5ヵ年の研究成果を総括するとともに、今後の課題について語っているが、その概要を以下に紹介する13)。(1)研究プロジェクトの総括 東アジア諸国に、モノづくりの視点からわが国の環境マネジメントの技術ノウハウを移転するための方法論を探り、関連人材を育成することが第1の目的であった。当初は日本と中国の大学が連携して始めたが、途中からベトナム、モンゴル、韓国、シンガポールの大学や行政機関が参加した。日本の企業も加わって産学官連携に広がった。5年間に計16回セミナーを開催し、活発な意見交換をしながら進めてきた。(2)重点的に取り上げたテーマ