メカトロニクス4月号2013年

メカトロニクス4月号2013年 page 37/60

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MECHATRONICS 2013.4 37 エーピーエヌ(株)は、長野県諏訪市沖田町を拠点にプリント配線板の設計、EMS(各種設計、基板製造、実装、組立)を行う電子事業を行っているが、これらの業務で培った技術を元に植物の施....

MECHATRONICS 2013.4 37 エーピーエヌ(株)は、長野県諏訪市沖田町を拠点にプリント配線板の設計、EMS(各種設計、基板製造、実装、組立)を行う電子事業を行っているが、これらの業務で培った技術を元に植物の施設栽培分野に進出し、植物工場のコンサルティングや関連機器の開発を行うアグリシステム事業部を2009 年に立ち上げている。2012 年10 月15日には岡谷市加茂町でママベジファーム岡谷の稼動を始め、野菜工場の開発と家庭向け栽培ラック「ママベジボックス(写真1)」の生産販売を開始した。このママベジボックスは小型の栽培ラックで、ラック栽培用の苗を岡谷工場から出荷してママベジボックスを購入した方に届けている。購入者は苗から育てるため栽培が簡単で、2012 年より販売を開始しているが一般家庭や飲食店で導入されている。 岡谷市加茂町にあるママベジファーム岡谷の野菜工場は、エアコンで部屋の温度調節をし、扇風機によって風を起こし、三菱電機の3波長蛍光灯を利用して昼夜を作っている小さな地球だ(写真2)。ここで、SUS304 の水槽を利用しリーフレタス、ロロロッサ、サンチュ、わさび菜などの葉野菜の水耕栽培が行われている(写真3、4)。 同社では、光合成のためにLEDではなく、三波長蛍光灯を使用している。これは一般の蛍光灯と仕組みは同じだが、色の3 原色(青・緑・赤)の3 波長域と呼ばれる色域に希土類蛍光体を利用して、蛍光灯の色味をより自然なものにすることができるようになったものだ。一般に物が見えやすくなるという特徴以外に、同様のワット数の蛍光灯と比較して明るく見えるため、消費電力を一般蛍光灯よりも抑えることができ、省エネ効果 プリント配線板の設計、EMS の電子事業を行うエーピーエヌ株式会社は、植物工場コンサルティングを行うアグリシステム事業拡大のため、2012年10月に岡谷市加茂町にママベジファーム岡谷(岡谷工場)を稼動した。今回、ママベジファーム岡谷にて福島知子社長にお話しを伺った。所 在 地:U R L:事業内容:長野県岡谷市http://www.apn-jp.comプリント配線板の設計、EMS(各種設計、基板製造、実装、組み立て)、水耕栽培を利用した閉鎖型植物工場の立ち上げコンサルティング、製品の開発、販売(LED 製品、植物工場用機器、制御盤、その他)、など。エーピーエヌ株式会社ママベジファーム岡谷(岡谷工場)エーピーエヌ株式会社 ママベジファーム岡谷(岡谷工場)代表取締役社長福 島 知 子 氏・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がある。この蛍光灯を利用し7時~19 時を昼、19 時~7 時を夜とし12 時間で区切って昼夜を作っている。植物は、昼間に蛍光灯の光を浴びて光合成を行い、水と空気中の二酸化炭素から炭水化物(糖類)を合成し、光合成の水を分解する過程で生じた酸素を大気中に排出している。そして、光合成によって得た糖類で、夜に成長する。 植物を育てる上で、湿度は重要なファクターであり、ある一定の値を下回ると野菜が育たない。工場内では野菜棚を緩衝シートで囲み、湿度をコントロールしている。 水は意外なことに水道水を利用していた。「水道水はpHなどの値や成分が公表されているため、一番分かりやすく、肥料の成分などとの調整が簡単だから」と福島社長は言う。例えば、鉄分が水に多い場合、肥料の鉄分を少なくしなければならないが、湧水などだと、自分で水の成分を調べなければならない。また、樹脂性の水槽を利用する野菜工場が多い中、同社はSUS304の水槽を利用する。水槽の深さは4cmで、深さ3cm 分の液体肥料を加えた水をポンプで流している。 「種はウレタンに蒔きます。日本のウレタンは発泡技術が優れており、根がちょうど出やすい柔らかさを実現しています。それに比べると海外から調達したウレタンは硬いですね」と福島社長は日本のウレタンを見せてくれながら話す(写真5)。触ったウレタンは非常に柔らかかった。このウレタンは種が起きやすいように丸く窪みがある。その窪みから下に向かって十字にカットが施されており、発芽してから根がウレタンの下に向かって生えるように加工されている。ここでは種から野菜を育てており、種は2日ほどで発芽し、30~35日周期で野菜が収穫できる。湿度、温度、CO2、肥料をコントロールすることで野菜を早く育てることもできるが、早く育てた野菜は細胞が弱くなるそうだ。 そして、この工場ではカビや藻が生えない。これは同社のノウハウによるものだ。だが、食品工場のように工場内を無菌にするわけではない。野菜を育てるためには、植物に対してよい働きをする細菌は残さなくてはならない。そして、もっとも大事なことは、大腸菌を野菜工場内に持ち込まないようにすることだという。 福島社長は、一番重要なことは「客が喜ぶ味を作れるか」だと言う。そのために、この事業を始めて、自ら諏訪東京理科大学大学院でおいしい野菜を育てる技術を学んだ。この日、ロロロッサとわさび菜を試食させてもらったが、野菜はみずみずしく、シャキシャキの歯ごたえも感じた。生野菜の青くささもあり、わさび菜は辛みもあった。この冬は寒さの影響で野菜の生育が遅れ、値段が1.5~2倍ほど高騰している。植物工場で大量生産ができるようになれば、野菜の値段も安定するので、家計にも優しい。そのため同社は設備投資が少なく、ランニングコストが低い工場づくりを提案している。また、野菜の露地栽培が難しい地域にもコンサルティングを行っていきたいとしており、中国やマレーシアなどに進出している。 野菜工場は、高湿度環境で肥料などの化学物質も存在するため、ラックなどの設備劣化が激しい。「耐湿ケミカルの設備や電気器具が必要で、ぜひ電気メーカーと材料メーカーに開発をお願いしたい」と福島社長は話していた。~室内に小さな地球環境をつくり、お客が喜ぶ野菜を作る~植物工場コンサルティングを行うエーピーエヌ写真1 ママベジボックス写真3 植物工場内で育てられているロロロッサ写真2 植物工場内写真5 日本の優秀なウレタン写真4 ロロロッサの根っこ側