メカトロニクス2月2013年

メカトロニクス2月2013年 page 49/60

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概要:
MECHATRONICS 2013.2 491.インボリュート曲線(つづき)1.4 歯形理論 歯数z 1と歯数z 2 の歯車が噛合うとき、その回転角速度比ω1 /ω2は、一回転の平均としては歯数比の逆比z 2/z 1になることが理解できるであろ....

MECHATRONICS 2013.2 491.インボリュート曲線(つづき)1.4 歯形理論 歯数z 1と歯数z 2 の歯車が噛合うとき、その回転角速度比ω1 /ω2は、一回転の平均としては歯数比の逆比z 2/z 1になることが理解できるであろう。歯形の輪郭曲線を論ずるときには、平均としてこの比になるだけではなく、さらに、瞬時瞬時の回転角速度比が歯形のどの部分で噛み合っている(接触している)ときにでもこの比にならなければいけない。このことを歯形論あるいは歯形理論といっている。 図1.4によってこれを検証してみよう。いま、歯車O 1が歯車O 2をC 点において押しているとする。次の瞬間に両歯車が離れもせず、喰い込みもしないためには、両歯車のC 点における法線方向の速度が一致しなければならない。O 1、O 2から共通法線に立てた垂線の長さをそれぞれrb 1、rb 2とすれば、rb 1ω1= -rb 2ω2が成り立つ(符号は回転方向が逆になることを考慮している)。共通法線が両歯車の中心線を切る点をP とすると、三角形の相似性から、    ω1 =-rb 2 =-O 2P   ω2    rb 1     O 1P        (1.3)となる。このPを噛合いピッチ点(pitch point)という。歯形輪郭上での噛合い点が移動しても、角速度比が一定であるためには、両歯形の接触点に立てた共通法線が常に一定点P を通らなければならない。 インボリュート歯車の場合にはr b1、r b2はそれぞれの歯車の基礎円半径であり、歯数に比例する。O 1P、O 2Pをそれぞれの歯車の噛合いピッチ円半径r p1、r p2で表わすと、   rp 1cosαb =rb 1   rp 2cosαb =rb 2   rp 1+rp 2=a              (1.4)となる。ここでαbは噛合い圧力角(working pressureangle)、a は両歯車の心間距離(=O 1O 2)である。噛合い点C は共通法線上を移動し、共通法線は一定点Pを通るから、インボリュート歯形は等速性を満足する。この共通法線を作用線(line of action)という。 インボリュート歯車の噛合い状態は、しばしばベルトの回転状態にたとえられる。基礎円直径を直径とするベルト車にベルトをたすき掛けしたときの状態とインボリュート歯車の図1.4 の状態は等価である。ベルト車の心間距離を変えてもベルト車の回転速度比が変わらないのと同じように、インボリュート歯車対の心間距離を変えても歯車対の速度比は変わらない。1.5 インボリュート関数 インボリュート歯形の解析を行なう上で、インボリュート関数が用いられることがある。図1.5によってこれを説明する。 一対の外歯歯車対が噛み合っているとき、歯車z 1 の中心から見て歯車z 2の中心の方向をy軸に取る。作用線が回転方向x軸となす角αが噛合い圧力角であり、作用線が中心線を切る点が噛合いピッチ点である。 歯形のインボリュートがピッチ点を通るときのインボリュートの始点角をy軸から計ってβとする。基礎円半径をrb とすると、図から、   (β+α)rb =rb tanα   β= tanα-α=inv α        (1.5)となる。ここで、   invα= tanα-α     (1.6)で定義される関数がインボリュート関数と呼ばれるものである(αはラジアン)。圧力角αから始点角βを求めるのはインボリュート関数そのものであって容易であるが、その逆、始点角βから圧力角αを求めるにはインボリュート関数の逆関数を求める必要がある。インボリュート関数は単調増加関数なので、逆関数は一意に定まる。さらに、これは変曲点を含まないので、ニュートン法によって、解を容易に求めることができる。 インボリュート関数は歯厚の計算などに用いられる。2.インボリュート歯車の歯形2.1 基準ラック工具歯形 インボリュート歯車の歯形の標準は歯数毎に決められているわけではない。同一のモジュールと圧力角をもつラック工具で創成加工された歯車では、その歯数のいかんを問わず互換性があり、その、互換性のある一連の歯車群を加工する工具の歯形として歯車の歯形が定義されているのである。 ここで、互換性(interchangeability)とは、AとBが噛合うことができ、BとCが噛合うことができるとき、CとAもまた噛合うことができる。これを歯車の互換性といっている。この互換性も、インボリュート歯車のもつ特徴の一つである。 JISに定められた標準ラック工具の一歯分の形状を図2.1に示す。 図において、ラック(rack)のピッチ(pitch) p をπで割った値をモジュール(module)と呼び、m で表わす。モジュールは歯形の大きさを代表する数値であり、その単位はmmである。 歯数z 1の歯車のピッチ円半径をr 1とすると、   2 πr 1     z 1 =p =πm     d 1 = 2r 1=mz 1         (2.1)なる関係がある。d 1は歯数z 1の歯車のピッチ円直径である。モジュールの定義として、「ピッチ円直径を歯数で割った値」が用いられることもある。 以下、単に「ピッチ円」あるいは「ピッチ点」という時には、上式で定義されるピッチ円(基準ピッチ円、対ラックピッチ円)のことをさすものとし、相手歯車との心間距離によって決まるピッチ円半径は「噛合いピッチ円半径」と呼ぶこととする。 図において、工具切れ刃の形状はP 0からP 1まではy軸に対してαcの傾きをなす直線、P 1からP 2まではx軸方向の直線、P 2からP 3まではy軸に対して-αcの傾きをなす直線である。P 3からP 4までの曲線は頂??(bottom clearance)と呼ばれる部分であり、規格としては比較的緩やかに標準が決められているが、ここでは、円弧-直線-円弧の3 部分からなっており、中間の直線部分はx軸に平行、その両側の円弧部分は円弧の両端において、その接線方向が両端の直線に一致するようにつなぐものとする。 αcは工具圧力角(cutter pressure angle)である。古くは14.5°や27°が用いられたこともあったが、現在は20 °に統一されている。工具圧力角を基準圧力角と呼ぶこともある。 歯の高さ(歯たけ、tooth depth)は頂??部分を除くと2m(モジュールの2 倍)に決められている。この中心線をデータム線(datum line, 基準ピッチ線)という。データム線を基準にとると、歯先歯たけがm、歯元歯たけが(頂??部分を含んで)1.25mである。頂??部分を除く歯たけが2mのものを並歯(なみば)、これより高いものを高歯、低いものを低歯という。 切刃P 0P 1と切刃P 2P 3との図示x方向の距離は加工した歯車の円弧方向の歯の厚さ(円弧歯厚)となる。歯形の標準においては、データム線のところで、この値がラックピッチの1/2 になり、山と谷の厚さが等しくなるように定められている。なお、歯厚(はあつ、tooth thickness)という言葉は図示x方向の寸法(歯元から歯先までで変化する)に対して用いられ、紙面と直角方向の厚みに対しては歯幅(ははば)という言葉が使われる。インボリュート歯車の設計牧野オートメーション研究所長 山梨大学名誉教授 牧野 洋第2回図1.4 歯形の等速性(機械工学便覧より転載) 図1.5 インボリュート関数図2.1 標準ラック歯形