メカトロニクス1月号2013年

メカトロニクス1月号2013年 page 49/60

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MECHATRONICS 2013.1 49福祉事業に展開された経緯と製品の開発経緯についてお聞かせ下さい玉井:当社は、大手企業向けにOEM 供給などを行っていましたが、昨今の日本経済の状況を考えるとOEMを柱にした事業展開だけ....

MECHATRONICS 2013.1 49福祉事業に展開された経緯と製品の開発経緯についてお聞かせ下さい玉井:当社は、大手企業向けにOEM 供給などを行っていましたが、昨今の日本経済の状況を考えるとOEMを柱にした事業展開だけでは、企業を存続させていく自体難しい時代になってきています。今後は、自分達で新しい道を切り開いていく企業が増えていくと思われ、当社としてもそのような新たな事業にチャレンジすることが重要な課題となっています。 現在、「日本にどのような産業を残していくのか」といった国の重点政策に、医療/ロボット技術/エネルギー/材料などが挙げられており、特に医療とロボット技術を組み合わせたところが一番の成長分野とされています。当社は、すでにロボットと医療関連製品に実績があるため、この2つの技術を融合した製品で新しい事業の展開を検討し、医療分野は参入がなかなか難しいので、福祉分野に注目していきました。 それから、2010 年に開催された上海万国博覧会(以下、上海万博)の日本産業館において、一躍脚光を浴びたハシゴ昇降ロボット『夢ROBO』の展示も今回の事業のきっかけになっています。『夢ROBO』は、当社 FA 機器/ロボット/医療用機器等の制御システムなどで事業展開を行うマッスル株式会社。今回、新たな事業として福祉関連に力を入れようとする同社の動きと、福祉関連現場での声を反映した製品について、9月26日(水)~28日(金)に東京ビッグサイトで開催された『第39回国際福祉機器展』の会場にて、代表取締役 玉井 博文 氏にお話しを伺った。所 在 地:U R L:事業内容:大阪市淀川区http://www.musclecorp.com/FA 機器/ロボット/医療用機器等の制御システム、など。マッスル株式会社マッスル株式会社代表取締役玉 井 博 文 氏・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・が中心となり関西で立ち上げたプロジェクトチームにより開発された製品で、上海万博の記念館に永久保存されるほど注目を集めた展示物でした。『夢ROBO』の展示には、当社の社名を当初公表していなかったのですが、会期中や会期が終了したあとも「関西に面白いロボットをつくる会社がある」と噂になって、メディアなどの情報から当社を突き止めて新しいロボットのお話を色々ともってきて下さいました。そのお話しの中で、一番要望が多かったのが医療/福祉関連のロボットで、特に移乗システムと排泄物処理に関してが切実な問題になっていました。 これらの問題を解決するため、実際に色々な施設などにも訪問して現場の声を聞き、製品としてまとめ上げたものが、移乗システム『ROBOHELPER SASUKE』(写真1)と自動排泄処理装置『ROBOHELPERLOVE』(写真2)になります。この『ROBOHELPERSASUKE』と『ROBOHELPER LOVE』は、『夢ROBO』と同様にプロジェクトチームを組んで開発しました。前回同様当社がまとめ役となり、デザインも『夢ROBO』のデザインを担当されたプロダクトデザイナーの喜多俊之氏にお願い致しました。さらに今回は、関西地区だけでなく全国のロボットや医療/福祉関連に精通された専門家の方々にもご協力を頂き、素晴らしいプロジェクトチームになっています。 今回の『第39回国際福祉機器展』への出展は、『ROBOHELPER SASUKE』と『ROBOHELPERLOVE』の試作機を実際に展示し、お客さまの反応や声を量産機に反映したり、販売体制をどのようにしていくかなど、事業展開のヒントにさせて頂くのが目的になっています。移乗システム『ROBOHELPER SASUKE』と自動排泄処理装置『ROBOHELPER LOVE』の特徴などについてお聞かせ下さい玉井:『ROBOHELPER SASUKE』は、安全性と安心感をコンセプトに、介護する方の操作性も大変スムーズに行え、インテリジェントモータの採用でよりコンパクトな設計になっています(写真3)。主な特徴は、①本体上部は斜め60 度まで回転し、車椅子に合わせて角度が変えられる、②上下の変動が可能で、ベットや車椅子の高さに合わせられる、③バッテリー駆動の充電バッテリーは簡単に装着できる、④シートに乗ってゆったりと抱きかかえられるようにやさしく移乗できる、⑤アームの左右を伸縮自在にすることで、シートの形が変えられる、などが挙げられます。 『ROBOHELPER LOVE』は、複雑なメカニズムをよりシンプルで日常性の高い製品にまとめており、特殊センサにより大便/小便を自動で判別し、吸引/洗浄/除菌運転を自動で行います(写真4)。主な特徴は、①機械本体の洗浄水タンクの水温は常温保持で、洗浄時のみ温水となるよう設計されており、温水保持時の雑菌などの繁殖を防ぐ構造になっている、②洗浄工程の最後に除菌水洗浄されるため、臭気/カビ/汚れの付着なども防ぎ、日常のお手入れがとても楽になる、③特に汚れやすいメインホースは、単体で外せる構造になっており、定期的メンテナンスに対応している、④カップユニット内には、センサ(特許項目)および流路がある、などが挙げられます。現状の課題と今後の展開についてお聞かせ下さい玉井:福祉関連分野は、まだまだ当社にとって未知の業界になるので、実際製品を使われる現場と製品を作る側の距離が開きすぎているのが現状です。このニーズとシーズの距離を如何に詰めていくかが今後の課題であり、この距離を縮めることがヒット製品を生むきっかけになると考えています。 それから今後の展開としては、今回開発した2つの製品の量産体制を整えて世に普及させていきます。時期としては、来春をメドにどちらかの製品を発売したいと考えています。価格面では、できるだけ在宅介護などでもご利用頂けるように、保険の適用を目標にしています。また、この2つの製品以外にも次のバージョンとしていくつか構想を練ったり、ロボット技術なので付加価値の上がる機能を色々検討しています。 現状当社は、このマーケットをドライブしていく立場にいるので、政府や地方自治体などに協力を得ながら、製品を流行らす仕組みをしっかりと築いていきたいと考えています。本日はお忙しい中ありがとうございました。~現場の声を反映させた製品開発にチャレンジ~ロボット技術を応用して福祉関連事業に参入写真1 移乗システム『ROBOHELPER SASUKE』写真3 『ROBOHELPER SASUKE』の使用例写真2 自動排泄処理装置『ROBOHELPER LOVE』写真4 『ROBOHELPER LOVE』の装着時