メカトロニクス1月号2013年

メカトロニクス1月号2013年 page 48/60

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48 MECHATRONICS 2013.1序 文 インボリュート歯車は動力伝達用の歯車として広く用いられており、歯車メーカのカタログなどから容易に選択し、購入することができる。技術的にも古い歴史をもっており、多くの研究者....

48 MECHATRONICS 2013.1序 文 インボリュート歯車は動力伝達用の歯車として広く用いられており、歯車メーカのカタログなどから容易に選択し、購入することができる。技術的にも古い歴史をもっており、多くの研究者による数々の名著がある。 しかし、残念なことに、初歩的な技術者がこれを利用しようとすると、簡便な解説書がなく、転位係数の選択や、遊星減速機の減速比の決定に迷うことになる。 従来のインボリュート歯車の設計法に関しては、幾つかの誤解や迷信がある。その最たるものは歯数が17枚以上でなければならないというものであろう。どこにもそうは書いていないのに、そう思っている人は多い。これは正確には、「歯数が17 枚以下になると、無転位の歯車では切下げを起こすので、転位をしなければならない」、あるいは「転位をしたほうが良い」ということである。そのことが分っても、どのぐらいの転位をしたらよいのかが分らなければ、実際には決められないことになる。 本設計法では、インボリュート歯車は転位を行なうことを前提とする。歯数の少ない歯車であっても、転位を行なうことによって切下げを防ぎ、バランスの取れた歯形にする。そのことによって歯数の少ない歯車の使用を可能にし、そのことによって装置を小型化し、あるいはモジュールを上げて強度を増す。 歯数ごとに固有の最適な転位係数があると考え、なるべくその値を選択する。これは噛合う相手歯車の歯数や心間距離によらない。心間距離のほうを、両歯車の歯数と転位係数によって決定する。この場合、背??(バックラッシュ)をゼロにする心間距離を算出して、その値を採用する。 遊星減速機など、3 個以上の歯車の関与するものでは、3 番目以降の歯車は1、2 番目の歯車の寸法の制約を受ける。この場合は心間距離が先に決定されることになるので、この心間距離において背??をゼロにするような転位係数を選ぶこととする。 なお、いずれの場合にも、速比は歯数のみによって決まり、転位係数にはよらない。 本書は、インボリュート歯車の設計用ソフトウエア“GEAR2012”(仮称)の解説書として書かれたものである。このソフトウエアを用いることによって、歯形の形状を確認し、歯車の噛合いを追認しながら、歯車の回転状態をシミュレートすることができる。1.インボリュート曲線1.1 インボリュートの定義 インボリュート(involute, 伸開線)は、円に巻きつけた糸を弛みなく解きほぐすときに、糸の先端が作る軌跡である(図1.1)。 もとの円を基礎円(base circle)という。インボリュート上の各点から基礎円に接線を引くとき、その接線の長さは糸を解きほぐした長さに等しく、基礎円半径に解きほぐし角(ラジアン)を掛けたものになる。インボリュート上の各点の曲率半径はこの接線の長さに等しく、インボリュート曲線はこの接線と直交している。 インボリュートの逆、すなわち、与えられた曲線の曲率中心を結ぶ曲線をエボリュート(evolute、縮閉線)という。通常、インボリュートのエボリュートは円であり、円のインボリュートがインボリュートである。1.2 インボリュート曲線の式 インボリュート曲線の式は次のようにして求めることができる。 基礎円半径をrb、インボリュートの始点における半径方向角をθ0、解きほぐし角をθとする。インボリュート曲線をベクトルQで表わすと、これは基礎円半径ベクトルRと、これと直角をなす接線ベクトルTとの和となって、 Q=R + T=rbe j(θ+θ0 )-jθrbe j(θ+θ0 ) e jθ =cosθ+jsinθ(オイラーの式) j= -1                ( 1.1)ただし、ここで、角度は反時計回りに測るものとし、θが正のときには左流れインボリュートを、負のときには右流れインボリュートを示す。 ベクトルQを直角座標で表わすと、 Q=qx +jqy =rb(cos(θ+θ0)+jsin(θ+θ0)) +θrb(-jcos(θ+θ0)+ sin(θ+θ0)) qx =rb cos(θ+θ0)+θrb sin(θ+θ0) qy =rb sin(θ+θ0)-θrb cos(θ+θ0)      (1.2)となる。1.3 インボリュート曲線の性質 図1.2は、1個のインボリュート曲線を基礎円に固定し、基礎円に巻きつけた糸を一定方向に引っ張ったとき、インボリュート曲線がどのように動くかを図示したものである。糸を一定速度で引くとき、基礎円およびこれに固定されたインボリュートは一定角速度で回転するが、このとき、糸(作用線)とインボリュートは常に直交し、その交点は作用線上を一定の速度で移動する。 インボリュートが一本でなく、複数のインボリュートが等ピッチで配置されているときには、それぞれのインボリュートは法線方向に等間隔に並ぶ。この間隔を法線ピッチという。 インボリュート歯車は歯先円と歯元円にはさまれた部分のインボリュート曲線を歯形として用いるものである。インボリュート歯形は、右流れおよび左流れのインボリュート曲線、刃先円による円弧部分(「尖り」を生じている場合には存在しない)、そして、歯元の頂??部分(切り下げ部分を含む)の4曲線によって構成される(図1.3)。ただし、図1.3には頂??部分の曲線は示されていない。工具圧力角、モジュール、および歯数が与えられると、基礎円が確定し、基礎円からスタートするインボリュート曲線の形が決まる。この曲線のどの部分を歯形として用いるかは転位係数による。転位係数が大きいほど、外側の、半径の大きい部分を使うことになる。 転位係数を任意に選択できることがインボリュート歯車の特徴の一つであり、設計上、もっとも「うまみ」のあるところである。転位係数を上手に選ぶことによって、かつて行われていた工具圧力角の選択、高歯・低歯などの歯たけの選択が不要になり、それと同様な効果を転位によって出せるようになった。インボリュート歯車の設計牧野オートメーション研究所長 山梨大学名誉教授 牧野 洋新連載第1回図1.1 インボリュート曲線図1.2 インボリュート曲線の回転図1.3 インボリュート曲線の切り取り