ブックタイトル実装技術8月号2021年特別編集版

ページ
38/46

このページは 実装技術8月号2021年特別編集版 の電子ブックに掲載されている38ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

実装技術8月号2021年特別編集版

521. はじめに 「製品の長期使用時に故障が生じる過程では、物理的,化学的要因で複合ストレスが、順列的もしくは同時に進み、劣化が製品耐力を越えた時点で故障に至る。」とされる。はんだ付け部では、以下の5 項がこのような故障に至る原因であろう。 ?エレクトロケミカルマイグレーション  (イオンマイグレーション) ?腐食 ?エレクトロマイグレーション ?はんだクラック ?サーモマイグレーション 本誌2015 年4月ではエレクトロマイグレーション現象について記した。本号では、より具体的にエレクトロマイグレーション試験(以下、EM 試験)について記す。2. 背景 EM の発生しやすい状況が整ってきた。  微細化の進むロジックデバイスではフリップチップ接続部で直径50μmが実現され0.2A の電流が流れると電流密度はEM 目安の10kA/cm2を超える。1998 年に125μm 径の接合部のEM信頼性について論文1)が発表されて以降、この分野の研究がさかんに報告されるようになってきた。 パワーデバイスはフリップチップのような微細接合ではないが数百Aの大電流を扱う上に、高温雰囲気下に置かれることも多くEMが発生しやすい。このため、この分野でもEMを信頼性問題として認識する必要性が指摘され始めた。たとえば、ハイブリッドカーのパワーコントロールユニットは低燃費と小型高出力化が同時に要求されることからカーメーカーでもEMの検証が進められるようになっている2)。現にIGBTはチップの小型化が進んでおり、電流密度も確実に上昇している3)。今後、自動車の電動化や、SiCをはじめとする次世代パワー半導体の普及が進むことによってさらにEMが発生しやすい状況になることが予想される。3. EMについて EMとは金属配線を流れる電流密度が上がると金属原子が電子の流れる方向に輸送される現象で、その最大の加速要因は温度である。電流密度が10kA/cm2を超えるとEM 起因の故障が発生するとされている4)。図1にEM現象でパッドのCuが輸送された状態を示す。4. 試験片 EM 試験を実施するにあたり困難な点は試験片をどうするかである。EM試験は標準の試験片や試験方法が決まっているわけではなく、それらの検討から始めなければならない。さらに微細はんだ付け部の試験片を準備することも難しい。はんだ付け部の信頼性~エレクトロマイグレーション試験について~(株)クオルテック / 小田 翔基図1 EM発生例