ブックタイトル実装技術6月号2021年特別編集版

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概要

実装技術6月号2021年特別編集版

501. はじめに 自動車の先進運転支援システム(ADAS)は高級車から一般車に採用が広まり、汎用的な制御技術として成熟しつつある。ADASは旧来の車載電子回路と比較して部品の実装密度が高く、特にキャビン内の回路は接合部の微細化が進みモバイル製品に近い実装密度になっている。はんだ接合部の耐久性はその形状と大きさで異なり、応力集中部の作りやすさや、ボイドの発生箇所と大きさなどが要因として挙げられる。また、ADASはカメラ・レーダーなどの機能を備えたセンサも多く、外周部や駆動系など、組み付けられる場所によって耐振性や耐熱衝撃性などが新たに要求されている。 はんだ接合部の耐久性を向上させるためには、主成分のSn(すず)をSb(アンチモン)、Bi(ビスマス)、In(インジウム)などの金属を添加して固溶強化する方法や、N(i ニッケル)、Co(コバルト)などをCu(銅)とSnを介した金属間化合物として析出させてSn 相を微細化させる方法があり、車載電装回路ではPb(鉛)入りはんだの当時から高耐久あるいは高強度はんだと称して、いくつかの組成が導入されてきた経緯がある。これらの強化方法は金属では一般的な手法で、強度を高めることで接合部の塑性変形やクラックの発生と進行を抑えている。しかし、展延性が低下する背反を伴うため、Pb 入りはんだよりも展延性が小さいPbフリーはんだ、特にSn-Ag(銀)-Cu系に強化元素を添加したはんだの接合部では、従来は見られなかった脆性破断や、応力の集中による部品破壊が報告されている。これらの問題を解決するためにiNEMI(国際エレクトロニクス製造者協会)でも各国のはんだメーカーから10 組成以上のはんだを集め、弊社からはSB6NX(Sn-Ag-Cu-Bi-In 系)を提案し、多角的に解析を行っているが明確な結論は得られていない。 本稿では、従来の高耐久はんだになかったSn-Ag-Cu 系はんだと同等の展延性を持ち、はんだ接合部の耐久性を向上させた、新たな高耐久はんだ『HR6A』の性能について報告する。2. 開発のコンセプト 欧州では日本よりも早くから、Sn-Ag-Cu 系はんだの耐久性を向上させる取り組みを行い、いくつかの企業が共同でBi、Sb、Niを添加した組成を開発している。この組成は、欧州でSn-Ag-Cu の三元共晶と言われるSn-Ag3.8-Cu0.7 の組成にSn の固溶強化に有効なBi(JEITAが推奨している低Ag組成でもSAC107に2%のBiを添加した組成の機械的強度はSAC305と同等)を3%、同様の目的でSbを約1.5%、その他にNiを0.1%以上含有している。しかし、BiはSnを固溶強化する金属の中で顕著に展延性を低下させるため、その他の強化元素との相性やAg、Cuなどの展延性に影響する金属の配合比率によって添加量を抑える必要がある。 『HR6A』は、主たる強化であるSn相の固溶強化にInとSbを、また、Sn 結晶を微細化させる元素としてCoを選択した。Inは固溶強化元素として自社で最も実績があり、一方のSbは耐熱性の向上が期待できる。CoはCuとSnを介して微細な金属間化合物を析出させ、組織の変化を抑制することができる。この概念にしたがって、適度な強度でSAC305(Sn-3.0Ag-0.5Cu)と同等の展延性を持ち、部品を破壊しない高耐久はんだとして開発した。3.『 HR6A』の機械的特性 JIS Z 3198-2(2003)にしたがって『HR6A』とSAC305 の引張試験を行い、図1-1、図1-2に示す結果を得た。 『HR6A』は?40℃、25 ℃のいずれの試験温度でもSAC305 以上の応力を検出し、伸びは25 ℃のときにSAC305と同等で、?40 ℃ではSAC305 の2/3 程度に減少するものの、破断は脆性的ではなく絞りを伴うものであって、SSカーブは穏やかに低下している。 以上から、『HR6A』の引張特性はSAC305と同等で良好な延性があることを示している。Sn-Ag-Cu系はんだと同じ延性を持つ高耐久はんだ?Sn-Ag-Cu-Sb-In系高耐久はんだ『HR6A』の特性?(株)弘輝 / 森 公章