ブックタイトル実装技術7月号2018年特別編集版

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概要

実装技術7月号2018年特別編集版

14設計・解析・シミュレーション1234   はじめに 自動車の先進運転支援システム(ADAS : Advanced driverassistancesystems)は、車載エレクトロニクス分野でも最も急速に成長を遂げている分野のひとつである。なかでも安全でより良い運転のためのセンシングデバイスの進化は速く、カメラ方式、 LiDAR(Light Detection And Ranging)方式、ミリ波レーダ方式などがあるが、いずれも検知能力向上のため高分解能化や、信号遅延時間を減らすための工夫をしている。なお、センシングデバイスと信号処理回路を三次元実装する技術のひとつとして、シリコン貫通電極(TSV :Through Silicon Via)を利用した三次元積層ICが注目されている。 三次元積層IC設計をするには、ICチップやパッケージ/ボードのさまざまな条件を考慮して最適化することが求められるが、それに対応した設計ツールと手法が確立されていないため多くの工数を要していた。本稿ではTSVを用いた三次元積層IC設計フローとして、IC設計データのインポート、三次元積層IC設計、三次元積層ICのLVS(Layout versusSchematic)/ DRC(Design Rule Check)、解析用モデルの自動生成について検討・開発したので、事例を含めてその詳細を説明する。   三次元積層IC設計環境の構築 三次元積層IC設計環境を構築するには、IC系のツールを使う考え方、基板系ツールを使う考え方の2種類がある。今回は基板設計や基板のマルチボード積層を得意とし、三次元構造のメカデータなどを取り扱える基板設計ツール『図研 CR-8000 Design Force』をベースに、新たに三次元積層IC設計に対応したツール・環境を開発した。 従来の基板系ツールでは、ICチップの内部情報は扱わず、樹脂パッケージに関連する情報だけを取り扱うため、図1に示すようなICチップ間のマイクロバンプ接続を考慮しない設計データとなり、三次元積層IC部分がブラックボックスとなる。したがって、ICチップ間の接続やマイクロバンプ間の座標ズレを検証することができず、手作業で確認していた。また、基板やパッケージとICチップ間の配線経路を確認する手段がなかった。さらに、TSVを含むICチップ内の情報がないため、三次元積層IC構造の解析用モデルを作成できず、解析ソフトのモデリング機能を使って手作業で解析モデルを作成していた。これらの課題を解決するために、①IC設計データのインポート、②積層チップ間接続検証、③解析用モデル自動生成を主要機能として開発すること、とした。   三次元積層ICと   樹脂パッケージ構造 モチーフとする三次元積層ICと樹脂パッケージ構造について説明する。搭載するICは全部で3 個であり、8×8mmのCPU1 個と、5.4×2.7mmのメモリ2 個を3 段に積層する。これを27×27mmの4層樹脂パッケージにフリップチップ実装し、樹脂モールドした樹脂パッケージデータを作成した(図2)。なお、CPUは15,600 個のマイクロバンプ、メモリは9,520 個のマイクロバンプ、樹脂パッケージは376 個のはんだボールを持ったBGA(Ball Grid Array)であり、相互に電気的に接続されている(図3、図4)。   三次元積層IC設計に必要な機能 三次元積層ICの設計ができる環境を構築するため、まずはあるべき姿を考え、理想的な設計フローを想定して必要となる機能要件を抽出し、図5に示す『三次元積層IC設計フロー』を得た。新しく構築する三次元積層IC設計ツールには、以下のような特徴的な機能を盛り込んだ。なお、このツールでは三次元積層ICおよび、パッケージ、樹脂モールド、はんだボールを含むパッケージを1つの画面に表示することができ、さらADASに向けた三次元積層IC設計とモデリング技術(株)図研 / 長谷川 清久