ブックタイトル実装技術6月号2018年特別編集版

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概要

実装技術6月号2018年特別編集版

42プリント配線板製造の動向を探る12   はじめに 電子機器が扱うデータ量の増加にともない、プリント配線板に実装される半導体間の信号伝送は高速化している。電気信号がプリント配線板を伝搬する速度は、その材質や信号配線の構造によって決まるものであり、現在も材質は一般FR-4が主流で、従来からあまり変わっていない。ここでいう高速化とは、半導体同士を接続する信号線の本数は一定のまま、単位時間あたりに伝搬するデータ量が増加することである。信号線1本または1対に伝搬する信号の伝送速度は、1秒あたりのビット数としてbpsやb/sで表現されることが多い。パラレル伝送は複数のデータ線を用いた信号伝送であり、メモリコントローラとDRAMからなるメモリバスが代表例である。現時点で最新のDDR4-SDRAMにて、信号線1 本に伝搬するデータ信号は最大3200Mbpsである。10 年以上前に主流のDDR-SDRAMでは最大400Mbpsであり、8 倍高速化している。シリアル伝送は、パラレル伝送されたデータを半導体で束ねて送る方式であり、信号線1 対あたりUSB3.0では5Gbps、PCI Express Gen3では8Gbpsである。約20 年前、USBはバージョン2.0にて480Mbpsであり、約10 倍の高速化である。 高速化にともない、一般的なロウとハイの2値伝送の場合、1ビットあたりの時間が短くなる。この時間は、速度が1Gbps(=1000Mbps)の場合は1ns(=1000ps)、10Gbpsの場合、100psである。この高速化を担うのが、主には半導体であるが、半導体同士を接続するプリント配線板の信号用導体や、半導体への電源供給用導体の影響を受け、正常に動作しないことがある。高速な信号伝送を実現するには、パターン設計とよばれるプリント配線板の設計において、回路図に基づく半導体や各種部品間の接続だけでなく、高速伝送に対応した導体の設計が適切に行われる必要がある。 本稿は、プリント配線板の設計開発に関する最近のトレンドとして、高速パラレル伝送の代表例であるメモリバスについて信号配線設計と実測を紹介する。 なお、筆者が所属するRITAエレクトロニクス(株)は、アイカ工業(株)のプリント配線板事業を母体として2014年にできた総合プリント配線板メーカーであり、おもに産業機器分野へ、シミュレーション・パターン設計、プリント配線板、コンサルティング、および部品調達・実装を供給している。この観点での執筆になることをご理解・ご了承いただきたい。   プレシミュレーション 現在、産業機器向けの組込みボードの新規開発で用いられる高速メモリは主にDDR3-SDRAM(以下、DDR3と略す)であり、画像を扱う用途ではDDR4-SDRAM(同、DDR4)の採用も増えてきた。このSDRAMのトレンドを示したものが図1である。前述の高速化に加え、供給電源の低電圧化も進んでおり、DDR1(前書きにおけるDDR-SDRAMと同義)のときは2.5V供給のところ、DDR2では1.8V、DDR3では1.5Vまたは1.35V、DDR4では1.2Vになっている。 DDR3やDDR4をプリント配線板に実装する場合、正常な高速信号伝送のため、どのようにパターン設計を進めたら良いかが課題となる。これらに共通して、信号線の種類は、クロック、制御系、データ系の3つに大別される。図2 のDDR3メモリバスの一般例を用いて説明する。クロックは、半導体の当該信号の入出力はP(+)とN(-)を1対(一組)とする差動であり、プリント配線板の配線としても2本を用いる。図1 SDRAMのトレンドプリント配線板の設計開発に関する最近のトレンド ?高速メモリバス編?RITAエレクトロニクス(株) / 田中 顕裕高速化データ信号の速度低電圧化