ブックタイトル実装技術4月号2018年特別編集版

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概要

実装技術4月号2018年特別編集版

18製品製造現場を効率化させるシステム・技術12   まえがき1. 製造業を取り巻く変化 今、製造業においては、現場の設備総合効率を維持・向上するために、IoTなどの技術を用いて「稼働情報」や「品質情報」の見える化に取り組む企業が増加している。その背景について、周知の内容ではあるが、3つの側面から簡潔に述べる。 第一に、労働人口の減少に伴う熟練工の不足である。15~64 歳までの労働人口は減少の一途をたどり、今後ますます、熟練工の不足が深刻化すると予想されている。 第二に、大型設備投資の抑制である。年度によって増減はあるものの、過去数十年間、設備投資額の平均値は大きく変化していない。このことは、基本的に大きな設備投資は避け、既存設備をできるだけ有効活用したいという考え方の現れである。 第三に、設備投資の海外比率の増加である。上記のように設備投資額の平均値は概ね横ばいであるが、海外における投資は増加傾向である。いっぽう、熟練工が不足しているため、一般的に海外では人財の確保も後継者の育成も難しい。 つまり、古い設備を保守して使い続けたいが、その設備を熟知している熟練工はどんどん減少を続けており、そのスタイルが限界を迎えつつある。さらには、海外で新規設備を立ち上げ、現地技術者が保守を行わなければならないが、育成が追いつかないという状況に多くの企業が直面しているのは、周知のとおりである。2. 装置状態見える化への期待 上述のような環境変化に対して、IoTによる情報化、AIによるデータ分析、学習といった最新技術が登場・進化し、これまで熟練工頼りだった装置の保全をスキルレス化できる期待が高まっている。また、熟練工による保守を行ったとしても、装置が突発的に停止し、その復旧に膨大な時間を要するという問題も発生している。 これらの問題に対して、装置状態を見える化し、そのデータを分析することで、予兆検出、突発停止の原因特定につなげたいというのが現在高まっている一般的なニーズである。3. オムロンの取り組み このような変化、市場のニーズをとらえて、装置状態の見える化に必要となる様々なセンサの企画・開発を初め、データ解析に必要となるAIの開発などにも取り組んでいる。本稿においては、装置状態の見える化に必要となるセンシングを中心にオムロンの取り組みを述べる。   予兆保全の進化の方向性と   装置状態見える化の考え方1. オムロンが目指す予兆保全 では、装置状態の見える化とそれによる予兆保全について、どのような姿を目指すのか? オムロンの考え方を以下に記す。 これまでは、熟練工が経験やノウハウに基づいて、定期保全を行ってきた。そして、現在は装置状態を見える化することで、異常が発生する前に保全を行うという各社の取組が始まっている。 これが実現できた後には、あらゆる状態を見える化するのではなく、装置毎に何を見える化し、その項目がどのような範囲であれば適正なのかという人間の健康診断のようなことができる状態。 さらに先には、その状態変化を装置のパラメータの最適化などに活用することで、より高精度で、ばらつきの少ないものづくりに活用する。 さらには、装置自体が情報を自ら収集分析し、ものづくりを進化させていく、そんな世界がそう遠くない将来にやってくるのではないかと考えている(図1)。2. センシング要件起点での装置状態の見える化 装置状態の見える化といっても、具体的にどのような状態を定量化するために、どんなセンサを、装置のどこに取り付けるのか? この問いに対するオムロンの考え方を以下に示す。 装置は構成上大きく、メカ的に稼働させる機構系、冷却水や装置の状態センシングと予兆保全による生産の効率化オムロン(株)