ブックタイトル実装技術9月号2017年特別編集版

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概要

実装技術9月号2017年特別編集版

39 実ははんだ付け結果も同じである。私は不良改善などのご依頼でよく工場に行くが、その会社のかたがたが何週間もかかって改善できなかった不良を、早い場合は15~30 分あれば改善することができてしまう。これは何も自慢をしているわけではない。なぜその会社のエンジニアのかたがたにできなくて、私にはできるのかというと…「はんだ接合部の見方を知っている」。ただそれだけなのである。① 見る どういう状況か「判断する」という見方である。その状態の把握ということになる。つまり、形はどうであるか? 色はどうであるか?というような、不良がまず不良であることを認識するということである。② 視る 先に説明した①の見るとほとんど同じであるが、こちらの「みる」はより注意深く視るという姿勢になる。上記の①が裸眼で見ていたとすれば、拡大鏡やマイクロスコープを使用してみるような感じである。 電子部品であれば、端子や電極の状態など、フィレットの形状やはんだ表面の光沢など、先程の見方よりもより詳細な見方をする。③ 観る この「みる」は逆に、俯瞰してみるような感じである。②がミクロに視ているということになるとすれば、こちらはマクロに観るということである。 不良の対象は、基板全体のどの位置にあるのか?基板全体としての反り方はどうであるか? 本日の設備の状態は何か問題があるか? 本日の作業者の状態はいつもと同じであるか?など、不良が発生している基板そのものよりも、さらに大きく「みる」範囲を広げて判断する。④ 診る この「みる」は、ある程度の予想を立てて判断するという姿勢になる。論理的に判断する見方といってもいいかもしれない。 その部位で、そのような不良が起こる、ということを論理立ててみるということになる。AであるからBになり、Cが生じて不良になった。このように頭の中で不良の経緯をストーリー立てて判断しながら、みるということである。⑤ 看る この「みる」は、気を配って判断するという姿勢になる。図2 「視点」と解釈上記④の見方は、あくまでその不良に対して論理的に判断した見方である。 これに加えて「そうであるとするならば、背反してあの部位には次のような現象が起こるはずだ」というように、不良部位だけの事ではなく、他の部位に生じる現象も含めて看ていくという姿勢・判断の仕方になる。 不良を改善していくためには、このように多くの「みる」という姿勢の、使い方が存在する。これらを、それぞれの場面において、正しく選択できることが不良改善には必要なことになる。 このような基本姿勢がないままで、「いきなり不良部位を観察」し、「詳細に情報を集め」、「対策を打とう」としても、うまくいかないのはあたりまえなのである。 「とりあえず不良が出たから対策する」というのは、ゴルフでいえば「とりあえず球があるから打つ」といっているのと同じである。このような練習の仕方では、ゴルフがうまくなるはずもない。 あたりまえであるが重要なので、しっかりと覚えておいていただきたいと思う。3.「視点」は解釈 以上、あらゆる場面にを想定して「みる」について説明をしてきた。なぜあんなに細かい説明をしたかというと、われわれ人間は物事を正しく見ていないことのほうが多いからである。 自分の目に飛び込んできた映像を「そのまま見る」というのは、実は至難の技である。それほど人間というのは、ただ見るということが難しいのである。脳が発達しているからかもしれない。 つまり、人間は目の前に現れた出来事を「解釈」しながら「みている」のである。そしてその出来事は解釈によって判断が異なる(図2)。