ブックタイトル実装技術3月号2017年特別編集版

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概要

実装技術3月号2017年特別編集版

461. はじめに 原子の大きさ程度は楽々と観察できるようになった高性能電子顕微鏡はあらゆる産業界に用いられており、医学の発展にも大きな貢献をしている。 その電子顕微鏡とともに歩んで67年、ますます高度な技術で発展を遂げているのが、日本電子(株)(以下、JEOL)である。 筆者は、電子顕微鏡に詳しい訳でないが、JEOL の代表取締役兼副社長執行役員の岩槻氏に懇切丁寧な説明をしていただいたので、今月号は主として電子顕微鏡やその他の高性能検査機器の解説を行うことにする。2. 透過電子顕微鏡:TEM ( Transmission Electron Microscope)1. 電子顕微鏡の全体図 まず、電子顕微鏡の構成と電子の行路を図1に示す。一番上の電子銃の負に印加された電子は、陽極のゼロ電界に引かれて陽極のアパチャーを通り、第1コンデンサレンズを通りコンデンサ絞りで焦点を結ぶ。コンデンサ絞りの微少なアパチャーが、点光源となる。第2コンデンサレンズで並行ビームとなって試料に照射し、透過した電子がレンズ系で拡大されて蛍光板に投影される。蛍光板の像は、CMOSイメージセンサなどのカメラで撮影され、テレビ画面で観察される。2. 電子銃 金属内には電子が充満しているが、表面のポテンシャルバリアのため、何もしなければ電子が外へ飛び出すことはない。電子を取り出す方法として、以下のようなものがある。①金属などでは、非常な高温になると表面のバリアを越え  て電子が飛び出してくる。タングステンや六硼化ランタン (LaB6:ラブロクと呼ばれる)などの陰極を加熱して熱電子 を放出させる方式の電子銃が用いられる。②熱電子放出が有効に起こる温度より低温(?1500℃)で 電子銃を加熱しておき、強電界をかけて電子を放出させる。 表面のポテンシャル障壁を下げるのでショットキー型と呼 ばれる。実際にはタングステンの表面を酸化ジルコニウム で覆って仕事関数を下げて(?2.7eV)、電子を放出しやす くしている。電流の安定性が優れているので電子顕微鏡の 光源として広く普及している。③単結晶のタングステンチップを室温のまま、さらに強い電 界をかけてポテンシャル障壁(?4.5eV)を量子論のトン ネル現象を利用して電子を放出させる冷陰極電子銃。エ ミッタは室温であるがエミッタ近傍の真空をさらに良くし ているためチップの表面に残留ガスが吸着せず、長時間に厚木エレクトロニクス / 加藤 俊夫シリーズ・企業訪問 きらりと光る優良企業(第23回)電子顕微鏡やその他の検査機器に対して、最高度技術を発展させて産業界に貢献する日本電子(株)図1 透過型電子顕微鏡の構成