ブックタイトル実装技術12月号2016年特別編集版

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概要

実装技術12月号2016年特別編集版

 今回、火災が発生した送電ケーブルだけではなく、日本の社会インフラは経年変化による劣化と寿命が大きな問題になっています。 2012 年に中央高速道路の笹子トンネルの天井板が落下して、9 名の方が亡くなった事故は、まだ記憶に新しい出来事です(図3)。 これも、トンネルは1975年に完成し、77年に開通してから、35年が経過した施設です。 ここでも年に1度の定期検査と5年に1度の詳細検査を行っていましたが、基本的には目視検査では、コンクリートの劣化は発見できず、長年、気づかずに見過ごされてきた結果です。 1964年の東京オリンピックから、列島改造ブーム、高度経済成長期にかけて、日本の社会インフラの大部分が整備されました。 それから、35 年から50 年が経過し、その間、抜本的な対策が実施されないまま、多くの設備が耐用年数を迎えようとしていたり、耐用年数が過ぎたまま使用されています。 笹子トンネル天井板が落下事故や、埼玉県新座市の東電の地下ケーブル火災などの大事故だけでなく、水道管の破裂やトンネル屋根の落下、ケーブル火災など、社会インフラの老朽化による事故は多発しています(図4)。 これは、日本だけの問題ではなく、アメリカをはじめとする海外でも社会インフラの老朽化は大きな問題となっています。 アメリカでは2007 年8月にミネアポリスでミシシッピー川にかかる橋が落下し、通行中の車が50台以上、川に落下し、13人が亡くなる大事故が起きました(図5)。 筆者も、事故が起こる1ヶ月ほど前、この橋を渡りましたが、橋が落ちることなどは、想像もしないことでした。 この橋も1967 年に作られ、40 年が経過していました。この橋はI-35と呼ばれる幹線高速道路にかかっていて、片側4車線、の8 車線道路で、1日に約14 万台の交通量がありました(図6)。 やはり、毎年1 回の点検がされていました。3. 社会インフラとIoT ここまでにご紹介した日米の社会インフラは、すべて世界的な高成長時代に作られ、耐用年数が過ぎていたり、使いものばかりです。 この世界的な高成長時代には、日本だけでなく、欧米先進国全てで、第2次世界大戦の復興と社会資本の充実がなされた時代です。 この時代、世界的に社会インフラが建設され、その多くが耐用年数を迎え、老朽化が進んでいます。 しかし、世界的な安定成長時代になり、一時の多くの社会インフラをすべて作り直すことは、どの国、どの自治体に取っても困難で、危険を承知で使い続けているのが実情です。 仕方がなく、補修などのメンテナンスで、寿命を伸ばしながら運用しているのが現状です。 しかし、メンテナンスコストも設備が老朽化するに従い、アップしてゆきます。さらに問題は、年に1 回程度の定期点検をしても、ここまで紹介した例では、大事故が防げなく、大きな被害が発生していることです。 定期点検間隔を短くすることだけでも、人員やコストの面で大変な負担になります。 さらに、事故の原因調査結果を見ると、点検項目自体も、単なる目視検査ではなく、専用の検査治具などを使ってコンクリートの内部や、ボルトの取り付け強度、構造体にひずめ、ガスの成分など詳細な検査をしないと簡単には事故の防止ができません。 ここで、注目されているのがIoTです。 IoTを使い、ケーブルの絶縁低下により発生するガス、コンクリートの劣化状況、橋のひずみや揺れの状態などを常に監視していれば、設備の劣化は即座にわかり、大事故が発生する前に対処することが可能となります。 また、多くの人員を使って、膨大な距離の検査に比べ、大幅にコストを低減することができます。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図5 ミシシッピー川橋梁落下事故(US National Transportation Safety Board)図6 事故前の橋(US National Transportation Safety Board)図4 2010 年7 月、埼玉県の水道管破裂事故(Yahooニュース)落ちた橋51