ブックタイトル実装技術8月号2016年特別編集版

ページ
19/30

このページは 実装技術8月号2016年特別編集版 の電子ブックに掲載されている19ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

実装技術8月号2016年特別編集版

27品質確保と不良改善に必要なこと(フロー工程編③) ~フロー工法 工法の概要とプリヒート、およびプリヒート検証後のデータベース化~はんだ接合技術式もあるので、詳細は各設備メーカーに問い合わせて確認したほうがいいだろう。本フロー工程編では、シーズヒータによる輻射加熱を前提として解説を行うこととする。 プリヒータでの最大の目的は、フラックス中に含まれるIPAを揮発させることである。基板がフラックス中に含まれるIPA が揮発しないまま噴流のあるDip機構部に到達してしまうと、液状のままのフラックスが溶融はんだの噴流によって、はんだ浴の中に流されてしまう。この状態ではフラックスを塗布しただけの効果が得られないので、プリヒート部では、確実にIPAを揮発させることが必要である。この状態に気づかないままでいると、フラックスを塗布したにもかかわらずフラックスの効果が得られないので、「フラックスが足りないのだ」との認識で、より多くのフラックスを塗布しようと考えてしまう。 次にプリヒートの役割として必要なのが、「フラックスの軟化点温度以内に抑える」ということである。軟化点温度とは、言いかえると「ゲル化温度」ともいえる。フラックスは常温で固体の物質である。おおよそ130℃を超えるとフラックスは液状化する。約80~130℃までの間で、ゲル化の状態である。 これも先ほどのIPAを揮発させるということと通じる話であるが、スルーホールアップが悪い部品がもっているからといって、プリヒートでの加熱を必要十分以上にしてしまうと、フラックスが液状化してしまう。フラックスが液状化したまま、溶融はんだによる噴流にあたってしまうと、液状化したフラックスは溶融はんだによってはんだ浴の中に流されてしまう。先ほどの事例と同じように、フラックスを塗布したにもかかわらずフラックスの効果が得られないとすると、「フラックスが足りないのだ」との認識で、フラックスをより多く塗布しようと考えてしまう。より多くのフラックスを塗布すれば、フラックスの効果は得られやすくなるが、同時にフラックスが多くはんだ浴の中へ流されることとなる。 こうして、はんだ浴中に多くのフラックスが流入することで、溶融はんだそのものの対流性が悪くなり、はんだの濡れを阻害したり、スルーホールアップを悪くしたり、ボイドやブローホールが多く発生したり、はんだボールができやすくなったりと、いいことが一つもない。 上述したプリヒートにおける目的である2つの項目を、十分に理解しておいていただきたい。 最後にDipの工程である。 溶融はんだによる噴流によって、はんだ付けを行う。この工程での目的は、スルーホールアップを確実に行い、きれの良いピールバックを得て、はんだ付けを完了させることである。この機構部の詳しい解説は別途行うので、今の段階では「何を目的としているか」だけ確実に覚えておいていただきたい。   プリヒートの現状把握(図2) では、プリヒートの解説を行う。本稿の最初に説明したように、プリヒートの目的は2つある。①塗布されたフラックス中のIPAを揮発させる②フラックスをゲル化温度(約80~120℃)に到達させる なぜプリヒートの目的がこの2つであるかについては、先ほど説明を終えているので割愛する。 IPAを確実に揮発させるためには、先に設定したフラックス塗布量との相関が非常に重要である。これは容易に想像がつくことなので、あえて細かい説明はいらないと思う。(社)実装技術信頼性審査協会、STC ソルダリング テクノロジ センター3図2 プリヒートの現状把握