ブックタイトル実装技術6月号2015年特別編集版

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概要

実装技術6月号2015年特別編集版

35PWBのUL認証における課題プリント配線板製造の動向を探るスクグループを立ち上げ、その成果として一つの温度プロファイルを示してきた。タスクグループといっても米国中心の企業であり、その米国にはそもそも最先端実装技術に対応したPWBメーカーは皆無であり、軍需・航空関連の企業が多い。たとえ武器や航空機が最新のものであっても、それを支えるPWB関連技術は安全面、実績での運用によりきわめて保守的であり、最新の高密度実装ラインとの適合性に欠けている。が、それが議論の停滞の理由ではなく、前にも示したように、リフロー試験は部品を搭載して初めて接合性が評価可能な重要な実装工程であり、OEM各社固有の思想(というよりは制限事項という方が実態かもしれないが)で形成された製造ラインへの適合が重要であり、単なるはんだ耐熱試験ではない。はんだ耐熱性ということならば、従来から実施されており、鉛フリー対応でさらに条件が厳しくなったフロートはんだ試験法の方がはるかに厳しい。これは表面に回路加工がなされていないベタ銅の基材をはんだ槽に浮かべ、一般的には例えば288℃ 10 秒でふくれなどの異常発生の有無を確認する(各社によって要求時間は異なるが実際はもっと長持ちする)ものである。288℃という温度は材料であるガラスエポキシ材料の耐熱温度を超えており、本試験は実際、熱分解により発生するガスを絶縁層と銅箔との接着強度で破壊を食い止めていられる時間と言い換えることができる破壊試験である。これ以上厳しい条件はないはずなのに、加えて各社ごとに異なるリフロー特性を無視し、部品なしで特定のプロファイルの温度負荷試験結果を加えることは、顧客にとってはまったく必要がない試験である。ULの規格に加えるということは、UL自身またはUL認定ラボのみで行った試験結果のみが有効であることから、そのために過去に製造者が行った試験とは別に、ULでの余分な(かつ意味のない)試験を実施しなければいけない。 我々は以上のような事情を反論事項として本件には対応しており、その結果、進展もしていないというのが今の状況である。なお、本件はリジッドPWBのみならず、後に述べるUL796F(FPCを取り扱う安全規格)の議題でも取り上げられた。FPC業界の対応は後節で述べる。2. UL746E 7章に150℃のRTIを有する  ANSIグレードを追加する件 本件は2014年秋から提案のあったものであり、FR-4.0/4.1(現状RTI規格:130 ℃)に対しFR-15.0/15.1(RTI:150℃)を新たに加えるというものである。ULからは業界からそういう要望が出ているとの説明がされたが、それ以上の詳しい内容は提示されていない。ULの事前説明によれば既存FR-4.0/4.1 のさらなる分割ではなく、基材メーカーのオプションで既存品の中からRTI=150℃の実力があるものを「別品名で」FR-15.0/15.1 として「dual」に登録できるということは確認できた。しかし同一の材料が2 重のグレードで通用するという話は明らかに無理があり、将来的な分割を踏まえた事前準備と見るべきではないか。本件については今後注意深く見ていく必要がある。 本件は規格上存在するが現実の市場からはほとんど無視されているFR-5 を焼き直したものであると捉えることが重要である。FR-5は軍事技術から始まり、汎用コンピュータ向けなど高信頼性基板として展開が期待されたが、当時はIBMなどの大型汎用コンピュータ用基板材料と民生用基板とがはっきり区別できた時代。FR-5 もその要請に応えて作られた区分と考える。実際はパーソナルコンピュータに始まる情報関連処理技術での技術革新によって情報機器が小型汎用化し、大型汎用コンピュータは一部の分野を除き、すべてPCに置き換わった。その結果、民生用部材との区別がなくなり、市場は従来の規格が使えるFR-4 のみが要求され、基材メーカーもそれに応え、多種多様なFR-4 の氾濫に至り、分割へと連ながったと考える。FR-5 自身は死文化したわけではなく、少数ではあるがいくつかの部材が特定分野で現在も大量に使用中であり、規格としての消滅は考えられない。今回提案のFR-15.0/15.1 はそれを補う(何を?)ものと考える。 FR-15.0/15.1 がFR-4 の一つのカテゴリーとして定義付けられるのならば運用上の問題は少ないと考えられるが、先に述べたように、命名法からしてそうなるとは考えにくい。ということは分割されたFR-4の再分割に等しい。まるでケーキに包丁を入れ(2分割)、さらに今度はナイフに持ち替えてもう一度切る(4分割)、という繰り返しのごとくにあっという間に分割は進むであろう。ここで冒頭で述べた「分割とは終焉したわけではなく新たな開始点である」という言葉を思い起こしてほしい。なお、安全性に寄与することなく分割は無意味であるということは当初から日本が主張してきた内容である。3. UL746E 7.7.7項と表7.4に  フィラー入りのCEM-3のANSIグレードを追加する件 本件はCEM-3 にフィラー含量の上限値を定めるというものであるが、よく考えれば本件は単直に言って「CEM-3の分割」問題であり、FR-4 の分割問題と一緒であるというか横展開である。なぜならば上記文言を素直に読めば、上山寺 隆