ブックタイトル実装技術10月号2013年特別編集版

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概要

実装技術10月号2013年特別編集版

52電子が単体として存在せず、電気双極子と呼ばれるプラス電荷とマイナス電荷がペアになった状態で存在しています(図8)。 誘電体の両端に電位差がない状態ではこの電気双極子はばらばらな方向を向いていますが、電位差が印加されるとおのおのの電位に引かれて方向がそろいます(図9)。 基板の伝送線路配線では、信号とGNDプレーンの間で信号がハイのときは電位差が発生し、双極子の方向は揃います。信号がローになると、信号とGNDの電位差は小さくなり、双極子の向きはばらばらになります(図10)。 信号が高速になると、誘電体内部の双極子の方向変化が高速になります。この双極子の回転にはエネルギーが消費され、熱に変換されます。 このエネルギーは信号から供給され、誘電損失となり信号のエネルギー(振幅)を減少させます。この損失の大きさは、実数軸?虚数軸で表せます。入力信号の大きさに対して、実数軸成分が信号として得られる大きさ、虚数軸成分が損失で失われる大きさになります(図11)。 局座標で表現すると、tanδが損失となります。 信号が高速になればなるほど誘電体内の双極子の回転が速くなり、信号の損失が大きくなります。 誘電体の素材によって、内部の双極子の回転に多くのエネルギーを消費するものと、少ないエネルギーで双極子が回転するものがあります。 また、材料に応じて損失の周波数依存性も異なります。この双極子の回転に消費するエネルギーは誘電正接(tanδ)と呼ばれる材料に固有の値と材料の誘電率に依存します。 誘電体の誘電正接をtanδ、誘電率をε、信号周波数をf、誘電損失Ldとすると、単位長さあたりの誘電損失は、  となります。kは定数です。 つまり、周波数、誘電正接に比例し、誘電率の平方根に比例します。4.抵抗損失と基板表面粗さ 超伝導でない限り、銅をはじめとする導体にも、小さな値ですが、抵抗が存在します。 抵抗Rに電流Iを流すと、電気エネルギーWは熱エネルギーに変化します。 W=I2・R・・・(4) 基板の銅配線の抵抗Rは配線の断面積Sに反比例し、配線の長さlに比例します。 R=ρ・l/S・・・(5) ここで、ρは体積伝導率と呼ばれる導体材料の定数で、100℃の銅ではρ=2.23e?8・Ωmとなります。 このため、大電流が流れる電源配線では、断面積Sを大きくするために、厚い銅箔を使い、配線幅を太くします。 一般の信号では電流は10?20mA 程度で、銅箔の幅が100μm、厚さは18μm 程度です。これで長さ10cm の配線の抵抗は銅のρは25 ℃で1.72e?8・Ωmなので、0.955Ωとなります。 振幅1Vの信号が20mAの電流で伝播する場合、0.955Ωの配線での電圧降下はおよそ0.002Vとなり、出力の電圧は0.998Vになります(図12)。 この配線による損失Lrは Lr=20log( 0.998/1)=?0.00087dBとなり、ほぼ無視できるほど小さな値です。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図11 伝達される成分と損失図12 配線のもつ抵抗分の影響図8 電気双極子のイメージ図9 電圧がかかった状態図10 電圧がかからない状態