Wi-SUN対応、スマートメータ・HEMS向け無線通信LSI「ML7416」
業界初※Wi-SUNに最適なCPU内蔵の1チップ無線通信LSIを開発
~ HEMS(注1)で注目されるWi-SUN(注2)対応機器開発を簡単に実現 ~
【用語解説】
- 注1:HEMS (Home Energy Management System)
- 家庭内の機器をつないでエネルギーの見える化により省エネ行動をサポートし、さらに自動的な機器制御により快適さを保ちながら省エネと低コストを実現するシステム
- 注2:Wi-SUN (Wireless Smart Utility Network)
- スマートメータなどのユーティリティ(電気、ガス、水道等の公共設備)ネットワークを想定した無線通信機器におけるマルチベンダ相互接続性を確保するテスト仕様策定、ロゴマーク認証等を行っているアライアンス、もしくは、規格の名称
要 旨
ラピスセミコンダクタは、家庭の省エネ化に向け導入が進むスマートメータやHEMS機器に対応した無線通信LSI「ML7416」を開発しました。
本LSIは無線通信部とWi-SUNに最適な制御用CPUを内蔵した、業界初となる1チップ無線通信LSIです。無線通信部には国内スマートメータに多くの実績を持つラピスセミコンダクタの無線通信LSI「ML7396B」を、CPU部は業界標準32bitCPUコアである「Arm®Cortex®M0+」を搭載しています。また、512KB Flash・64KBRAMといった大容量メモリを搭載することで、ML7416はWi-SUN対応無線機器で必要になる全ての機能を1チップで実現できるため、省スペース化(従来比で約35%の実装面積を削減)、システム簡略化、設計負荷軽減に大きく貢献します。
本LSIは、2015年3月にサンプル出荷し、2015年8月より量産出荷を開始する予定です。
今後もラピスセミコンダクタは、利便性のある無線通信LSI開発に加えて、ソフトウェア開発環境の充実も図り無線機器開発を簡単にすることで、さらなる世の中のスマート化に貢献してまいります。
背 景
近年、日本国内の電力不足と地球温暖化抑制のために、エネルギーの効率的な利用に向けた取り組みが社会的な緊急課題になっています。家庭における省エネ化を実現するため、全家庭に通信機能を有するスマートメータを配備して、HEMS による省エネ化の実現に取り組みつつあります。
東京電力を始め電力各社でスマートメータとHEMSを結ぶ Bルート(注3) にWi-SUN方式が採用されたため、今後、スマートメータの設置が進み、Wi-SUNを中心としたHEMS機器の普及が期待されています。
しかし、Wi-SUN方式はその仕様上、システムに要求するメモリ容量が大きなものとなっています。これまでは、必要なメモリ容量の大きさから、Wi-SUNに適したCPU内蔵の1チップ無線通信LSIが存在せず、対応機器開発が容易な1チップLSIによるトータルソリューションが求められていました。
ML7416 システムブロック図
【用語解説】
- 注3:Bルート
- 経済産業省スマートハウス標準化検討会が定義した用語で、スマートメータが計測データ等をHEMS機器に向けて発信するルート(その他に、「Aルート」がスマートメータと電力会社間、「Cルート」が電力会社と第三者サービスプロバイダ間)
新商品の特長
1. ML7396B+マイコンで、部品点数削減と機器の小型化に貢献
本LSIが内蔵する無線通信LSI「ML7396B」は、Wi-SUNや日本の電波法にいち早く対応し、2012年から量産を開始しました。これまでは、ML7396Bと外部MCUを組み合わせて機器開発する必要がありましたが、本LSIを使うことにより、1チップで済み、実装面積を約35%削減することが可能になります。(外部MCUが9mm × 9mmと仮定)
また、従来の外部MCUが狭ピッチな端子のBGAパッケージの場合、多層基板が必要でした。本LSIでは1mmの広いピッチのBGAパッケージの採用と端子レイアウトの工夫により、単層基板でも部品を配置が可能になり、機器のトータルコストの低減に寄与します。
2. セキュリティ処理を約1/2000に削減し、高性能と省電力を両立
Wi-SUNの全てのデータ通信は暗号化されており、ソフトウェアによるWi-SUN暗号処理は非常に負荷が重く、これまでは、高性能かつ高速なマイコンによる膨大なソフト処理が必要でした。
本LSIでは、Wi-SUNの 暗号モード注4 に対応したハードウェア暗号エンジンとパケット処理に最適なDMAコントローラを開発したことにより、CPU負荷を1/2000と大幅に軽減させることに成功しました。これにより、性能を確保しつつ、システムの大幅な省電力化を図ることが可能です。
3. Flash 512KB、RAM 64KBの大容量メモリを搭載
Wi-SUNが想定するHEMSシステムは、一般的にデータ量は少なく、CPU性能はあまり必要とされませんが、Wi-SUNのソフトウェアを格納するためのROM/RAMの容量を確保する必要があります。
本LSIは、Wi-SUN対応機器向けに省電力CPUコアと、Flash 512KB、RAM 64KBの大容量メモリを搭載し、最適なWi-SUN機器が実現可能です。
4. 電池駆動も想定した省電力設計
本LSIが内蔵する無線通信LSI「ML7396B」は、業界トップクラスの低消費電力性能(待機時2µA、10mW送信時33mA)です。さらに、MCU部分の省電力設計、RAMの分割電源オフも可能なきめ細かい電源制御、高速ウェイクアップ回路等でシステムの省電力化を実現します。
さらに、低電圧検出器でシステム待機中の間欠動作 をサポートし、電池駆動のシステムにも適用可能です。
5. 開発サポート
本LSIでは、簡単に評価を開始できる「ML7416」評価ボードとサポートソフトウェアも合わせて提供いたします。
また、電波認証試験に必要なテストモード対応や、Wi-SUN認証試験リファレンスツールの提供など、無線機器開発に向けて、充実した開発サポート体制を提供いたします。
【用語解説】
- 注4:Wi-SUNの暗号モード
- AES-CCM(Advanced Encryption Standard - Counter with CBC-MAC)で、暗号と認証を同時に行う暗号アルゴリズム
仕様
- トランシーバ : ML7396B
- CPUコア : Arm Cortex-M0+
- 内蔵メモリ
- Flash ROM : 512KB
- RAM : 64KB
- インターフェース
- GPIO × 12、シングルサイクルIO × 4
- UART × 3、SPI (マスタ / スレーブ) × 2、I2C (マスタ / スレーブ) × 1
- タイマ : 32bit × 10、WDT、RTC、フレキシブルタイマ (PWM / オートリロードタイマ他)
- アナログインターフェース : ADC : 10bit × 3、内蔵温度センサ、低電圧検出器
- セキュリティ
- Wi-SUN暗号認証モードAES CCM、最新暗号認証モードGCM
- AES基本暗号モード (ECB、CBC、CFB、OFB、CTR)
- プロテクト機能対応 Flash-ROMコントローラ
- その他
- DMA、Flash-DMA、クロック補正用カウンタ、乱数発生回路、内蔵ブートプログラム、デバッグインターフェース(SWD)
- 動作周波数 : 32.768kHz ~ 40MHz
- 動作温度 : -40°C ~ +85°C
- 電源電圧
- 1.8 ~ 3.6V (送信電力1mWモード)
- 2.3 ~ 3.6V (送信電力10mWモード)
- 2.6 ~ 3.6V (送信電力20mW モード)
- パッケージ : BGA81 (10mm × 10mm、1mm端子ピッチ)
販売計画
- 商品名 : ML7416
- サンプル出荷時期 : 2015年3月から
- 量産出荷予定 : 2015年8月から
- 量産規模 : 月産30万個
応用分野
- 各種エネルギーマネージメント機器(HEMS、BEMS等)、スマートメータ、センサーネットワーク、各種計測機器、その他の無線通信が必要な産業機器全般
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