電子線ホログラフィを用いた化合物半導体解析法を確立
〜微量な不純物濃度差を捉えることに世界で初めて成功〜

2014年8月21日

当社は、一般財団法人ファインセラミックスセンター(以下、JFCC)(注1)との共同研究で、電子線ホログラフィ(注2)を用いた化合物半導体(注3)中の不純物分布解析手法を確立しました。本研究では、化合物半導体のpn 接合(注4)だけではなく、極めて微量な不純物濃度差を捉えることに世界で初めて成功しました。

背景

当社の光通信、産業用レーザ製品は、化合物半導体材料を用いて作製し、微量の不純物を混入させてデバイス構造を設計しています。これらの製品はナノレベルで構成されているため、製造及び開発する上で、製品中の不純物分布もナノレベルで解析することが必要となっています。

内容

当社は、JFCCとの共同研究により、電子顕微鏡の一手法である電子線ホログラフィを用いて、pn接合のみならず、極めて微量な不純物濃度差を観察することに成功しました。この手法は、2次元の複雑なデバイス構造を、ナノレベルで解析できるため、半導体デバイスの不良品解析や新商品開発に活用することができます。具体的には、本手法でデバイスの故障原因を明らかにし、設計や製造プロセスにフィードバックを行うことにより、長寿命かつ高出力の設計指針を得ることが可能となります。

本研究成果は、日本顕微鏡学会が発刊するMicroscopy誌63巻3号のEditor’s Choice論文(注5)に採択され、今回開発に成功した電子線ホログラフィ技術による写真が表紙に掲載されました。

GaAs 半導体の電子線ホログラフィによる位相像
P型半導体部において1019cm-3と1018cm-3領域が明瞭に識別できている。

用語解説

(注1)JFCC:
ファインセラミックスに関する研究、試験、評価を行う財団で、「ナノ構造研究所」では世界最先端水準の電子顕微鏡技術に関する研究を行っている。

(注2)電子線ホログラフィ:
電子顕微鏡で電子を干渉させることにより、電位や磁場を可視化できる手法。半導体中の電位分布を計測することにより、間接的に不純物分布を可視化することができる。その他の応用事例として、超電導の磁束量子の観察や、Li電池内部の電位計測がある。

(注3)化合物半導体:
複数の元素を組み合わせた半導体で、高出力励起レーザなどの半導体レーザの材料となる。

(注4)pn 接合:
半導体のp 型領域とn 型領域が接している部分。通常の電子顕微鏡では観察することができない。

(注5)Microscopy誌のEditor’s Choice論文:
Microscopy 誌の編集委員会が、内容が際立っており学術的なインパクトの大きいと判断する論文で、毎号1編選定される。web上でfree-accessとされ、写真が表紙に掲載される。

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